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001_労働契約のFAQ

【家族手当】歯科衛生士と助手の待遇差。改正同一労働同一賃金ガイドラインではどう判断されるか?

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

首をかしげる医師

当院は外来専門の歯科クリニックで、原則として歯科衛生士は正職員、歯科助手はパート職員で雇用しています。また当院では、正職員である歯科衛生士に対し、税法上の扶養となっている配偶者や子を対象として「家族手当」を支給しています。一方、パート職員の歯科助手に対しては、家族手当を支給していません。

歯科衛生士は国家資格を有し、患者さんのスケーリングやTBIやMFTといった保健指導など、専門的かつ広範な職務を担っています。これに対してパートの歯科助手は、歯科医師や歯科衛生士などの国家資格者の診療補助や受付等の定型業務に従事しており、勤務時間も短いので、家族手当の不支給は妥当であるという認識です。

ところで2026年10月1日施行の「改正同一労働同一賃金ガイドライン」において、雇用身分を理由とした家族手当の差別的扱いが禁止されると同業の歯科医師から聞きました。職務内容や資格の有無、勤務時間の多寡などが明確に相違している場合でも、パートの歯科助手に対して家族手当を支給しなければならないのでしょうか?

ご相談への回答

できるビジネスパースン

結論から申し上げますと、職務の違いや資格の有無、勤務時間の多寡を理由として、パート職員に家族手当を一切支給しない対応は、同一労働同一賃金法理(パートタイム・有期雇用労働法第8条)に基づき「不合理な待遇差」と判定されるリスクが極めて高いといえます。

改正「同一労働同一賃金ガイドライン」のポイント

2026年10月1日施行の「改正同一労働同一賃金ガイドライン」において、短時間・有期雇用労働者に対する手当の支給基準に関する判断原則がより明確化され、「契約更新を反復している等、相応に継続的な勤務が見込まれるパートタイム・有期雇用労働者には、正職員と同一の家族手当を支給しなければならない」と明示されます。

すでに同一労働同一賃金法理において「パートだから」「契約社員だから」などといった、雇用身分のみを理由とした待遇格差は不合理であり、認められないとされてきましたが、今般の改正により、家族手当の支給の可否について、雇用身分以外の理由に基づく合理的かつ明確な区分が必要であることが強調された…ということです。

職務内容や勤務時間が不支給の理由にならない理由

通達や判例において家族手当の支給目的は主に「労働者の生活保障」や「長期にわたる継続勤務・定着の促進」であるとされています。そのためこれらの目的に基づく支給区分について、合理的な理由を説明できなければなりませんが、職務内容や勤務時間の多寡については、次の理由から合理性が否定されます。

  • 職務内容の相違:国家資格の有無や職務内容の専門性などは、基本給や役職手当、資格手当等で処遇差を設けるべき対象です。生活保障や長期にわたる定着促進を目的とする家族手当の不支給を正当化する理由としては合理性が認められません。
  • 勤務時間の相違:勤務時間の長短と長期的雇用とは別の論点ですので、相応の継続勤務が見込まれる場合、家族手当を不支給とする根拠にはなりません。長時間パートの場合、扶養家族がいるケースも想定され、合理性を主張するのは困難です。

総額人件費の上昇にどう対応するか?

非正規労働者の多い事業者は、「改正同一労働同一賃金ガイドライン」により、家族手当や住宅手当などの生活給の支給対象者が拡大することで、事業所全体の人件費を押し上げる圧力が働きます。事業者の採るべき道は法理に則り非正規労働者にも生活給を支給するか、生活給を廃止して基本給や職務給などに転嫁する等が考えられます。

同一労働同一賃金法理は、不合理な待遇格差の解消のために、正職員の待遇を引き下げるようなことをすべきではないとしていますが、適切なステップを踏むことで、家族手当のような生活給を廃止し、その原資を基本給や職務給、資格給などに充当することまでは禁止していません。つまり成果重視の給与体系に移行するということです。

注意すべきは生活給を成果給に転嫁することで割増賃金の単価が上がることです。家族手当や住宅手当は時間外割増の算定基礎から除外できますが、賃金制度を改正した後は割増部分が増加します。念の為に申し添えると基本給がアップしても総支給額が変わらなければ、ベースアップ評価料を算定できないことにもご留意願います。

本件のポイント

気づきを得た白衣の男性
  • 家族手当は「生活保障」や「定着促進」を目的とするため、職務内容や資格の有無を理由とする不支給は「不合理な待遇差」とみなされる。
  • 2026年10月1日施行「改正同一労働同一賃金ガイドライン」により、継続勤務が見込まれるパート職員への家族手当の支給が明記されている。
  • 職務の違いや資格の有無、勤務時間の多寡等に対する処遇の差は、生活給ではなく基本給や資格手当・職務手当で区別するのが定石である。
  • 手当の不合理差を解消する際は手当の支給条件を見直すか、家族手当のような生活給を廃止し成果給中心に移行する方法などが考えられる。
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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/人事コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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