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005_労働安全のFAQ

【復職判断】曖昧な主治医診断書での復職判断と産業医不在時の対応はどうすべきか?

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

疑問な白衣の女性

当院(常勤歯科医師・歯科衛生士・歯科助手ら計9名が勤務する歯科クリニック)において、昨年10月より適応障害によるメンタルヘルス不調で休職している歯科衛生士より、「体調が回復してきたため、7月1日より復職したい」との申出がありました。

しかし、6月中旬に提出された心療内科の診断書を確認したところ、「病状は改善傾向にあるが、職場環境に対する不安や緊張感が依然として残存している」といった曖昧な記述にとどまっており、明確に「就労可能」または「復職可能」との医学的判断が示されておりません。

当院の歯科診療補助業務は、立ち仕事でのアシスタント業務や患者応対、切削器具等の精密な取り扱いが不可欠であり、リモートワークや身体的負荷のない軽作業への配置転換は困難な状況です。

なお、当院は常時50人未満の規模であるため産業医を選任しておらず、このような状態でどのように復職の可否を判断すべきか苦慮しております。本人を通じて主治医に復職可否の再確認を依頼すべきでしょうか?また、安全配慮義務の履行や実務対応において留意すべき点があればご教示いただけますでしょうか?

ご相談への回答

できるビジネスパースン

曖昧な主治医診断書への対応方法

復職の可否を判断するにあたり、「就労可能」かどうかが明確でない診断書のまま復職を認めることは極めて危険です。まずは本人を通じて主治医に対し、医院での具体的な業務内容に耐えうる状態であるかを再確認・再診断してもらう必要があります。

再確認を依頼する際は、単に「復職できますか?」と尋ねるのではなく、貴院の側から「職務内容説明書」や「勤務実態メモ」(例:1日7〜8時間の立ち仕事、切削器具等の精密操作、患者やスタッフとのコミュニケーション、通勤経路・通勤ラッシュの状況など)を主治医宛てに書面で提供することが重要です。

主治医に現場の具体的な業務負荷を提示した上で、「上記業務に従事することが医学的に可能か」についての具体的な意見書や診断書の再提出を求めることが実務上の鉄則です。

主治医診断の限界と安易な復職判断のリスク

主治医(心療内科・精神科医)は、患者の心身の治療や日常生活レベルの回復を主たる目的として診察しており、患者本人の「早く復職したい」という意向に沿った診断書を作成しやすい傾向にあります。そのため日常生活は問題なく送れるものの、歯科医院の現場業務に耐えうる職務遂行能力までは回復していないケースが散見されます。

十分な治癒に至っていない状態で安易に復職を許可し、現場復帰後に病状が悪化・再発した場合、医院は労働契約法第5条に基づく「安全配慮義務違反」を問われ、民事上の損害賠償責任を負うリスクがあります。

さらに「不完全な状態での復帰を命じられて過度な業務負担を強いられた」として、私傷病であったはずのメンタルヘルス不調が業務起因性の労災事故へと転嫁・主張されるトラブルも後を絶ちません。

小規模事業所における産業医面談の実施方法

労働安全衛生法上、常時50人未満の事業場には産業医の選任義務はありませんが、安全配慮義務を全うし的確な復職判断を行うためには、産業医の意見を仰ぐことが極めて有効です。自院に産業医がいない小規模な歯科クリニックであっても、以下の方法でスポット的な医師面談や意見聴取を実施することが可能です。

  1. 地域産業保健センター(地産保・地さんぽ)の活用:独立行政法人労働者健康安全機構が運営する地産保では、常時50人未満の事業場を対象に、復職時の医師による意見聴取や健康相談を原則無料で提供しています。
  2. 地域の医師会や開業産業医へのスポット相談:各都道府県や郡市区の医師会では、日本医師会認定産業医の紹介や検索窓口を設けている場合があります。近隣の内科・心療内科等で日本医師会認定産業医の資格を持つ医師を探し、有償で復職判定面談を依頼するアプローチも実用的です。
  3. 産業保健支援サービス(オンラインスポット面談)の利用:民間企業が提供する産業医スポット面談サービスを活用し、オンライン面談と復職に関する意見書作成を単発で委託する方法もあります。

本件のポイント

気づきを得た白衣の女性
  • 「就労可能」の明記がない曖昧な診断書で復職を即断せず、医院の具体的な業務内容・身体負荷を主治医に書面提示した上で再診断を求める。
  • 主治医は治療優先の視点であるため、職務遂行能力の判定には産業医や産業保健に精通した専門医のセカンドオピニオンを仰ぐことが安全である。
  • 病状が不十分なまま復職させて悪化・再発した場合、安全配慮義務違反(損害賠償請求)や私傷病の労災転嫁を招く重大なリスクがある。
  • 常時50人未満の歯科クリニックであっても、原則無料の「地域産業保健センター(地産保)」や地域の認定産業医を活用してスポット面談を実施できる。
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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/人事コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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