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01_雇用管理

みなし労働時間制

みなし労働時間制のアイキャッチ

みなし労働時間制の趣旨

みなし労働時間制とは、労働時間を把握することが難しい労働者について、所定労働時間を就業したものとみなすことができる制度である。ただし、使用者がこの制度を都合よく曲解して労働者の過重労働を招くリスクがあるため、この制度の導入には厳しい要件がある。

みなし労働時間制を大別すると2つある。ひとつめは外勤の営業職など、勤務時間の把握が難しい職種のための事業場外のみなし労働時間制、ふたつめは仕事の専門性の高さゆえに、労働時間の管理を個々の労働者の裁量に委ねてしまう裁量労働制である。

そして裁量労働制には、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2種類がある。前者は労働基準法施行規則で具体的に列挙された20の専門職が対象であり、後者は企業の経営企画部門において調査、分析、立案などの仕事に従事する労働者を想定している。

3つのみなし労働時間制の特徴

事業場外のみなし労働時間制

事業場外のみなし労働時間は、たとえば直行直帰が常態となっている外勤の営業職など、始業や終業ごとにタイムレコーダーの打刻が難しい労働者について、所定労働時間(みなし労働時間)を労働したものとみなすという制度である。

事業場外のみなし労働時間制は、就業規則に定めることで導入できるが、所定労働時間に法定時間外労働が含まれる場合は、36協定とあわせて事業場外のみなし労働時間制にかかる労使協定を締結し、事業場を所轄する労働基準監督署に届け出する義務がある。

事業場外のみなし労働時間制は「正確な労働時間の把握が難しい場合」について実施できる。つまりスマホの勤怠アプリなどで正確な勤怠データを収集できる場合は、この制度を導入できない。ICTの進化によっていずれ消滅する制度である。

専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制は、使用者が仕事の進め方や時間の配分を労働者に具体的に指示することが難しい専門職について、始業と終業の時間を労働者の裁量に委ねる制度である。つまり何時に出勤して何時に退勤しようが、所定労働時間を働いたものとみなすということである。

なお専門業務型裁量労働制は、労働基準法施行規則に列挙されている弁護士、公認会計士、税理士、建築士、研究開発者等の20職種に限られている。実施に際しては対象となる労働者の同意を得た上で、事業場の労働者の過半数代表者と労使協定を締結しなければならない。

企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制も専門業務型裁量労働制と同じく、出退勤の時間および1日の労働時間を、個々の労働者の裁量にゆだねてしまう制度である。対象者は経営企画部門で調査や分析に携わるホワイトカラーなどを想定しているが、法令で職種が特定されているわけではない。

企画業務型裁量労働制は対象となる職種が特定されていないため、使用者が対象となる職種を拡大解釈する恐れがある。したがってこの制度の実施にあたっては、労使委員会の設置や労働基準監督署への議事録の届出、定期的な実施報告など、厳しい要件が設定されている。

これら3つのみなし労働時間制は、あくまでも労働時間について所定労働時間を就業したとみなす制度なので、みなし労働時間制の対象者についても、休憩や休日、深夜労働に関しては労働基準法の規定が原則通り適用される。

高度プロフェッショナル制度

高度プロフェッショナル制度とは、労働時間と仕事の成果に直接的な関連の無い高度専門職について、労働時間のみならず休憩や休日、深夜労働までも、個々の労働者の裁量に委ねてしまおうという制度であり、労働時間という概念そのものが適用されなくなる。

一方で、かつて高度プロフェッショナル制度が「定額働かせホーダイ」と揶揄されたように、使用者がこの制度を恣意的に捻じ曲げて運用することによって、高度プロフェッショナル制度の対象労働者がブラック労働(低賃金の過重労働)に陥るリスクが高い。

そこで労働基準法では、この制度を実施するにあたり、対象労働者の年収を1,075万円以上、週40時間を超える健康管理時間(労働時間)を月100時間以下かつ3ヶ月240時間以下、年間休日を104日以上、深夜勤務は月4回以下とせよ、といった厳格な要件を設けている。

みなし労働時間制のまとめ

みなし労働時間制と高度プロフェッショナル制度の大きな違いは、前者が労働時間の管理が難しい労働者は所定労働時間を働いたものとみなすのに対し、後者は労働時間と仕事の成果に関連性が無い労働者については最初から労働時間を管理しないものとする点である。

なお労働基準法第41条にも、労働時間管理の例外として管理職などを列挙しているが、これらの職種と労働基準法の適用範囲をまとめると下表のとおりとなる。

全ての労働時間管理の対象外とされる高度プロフェッショナル制度であるが、労働安全衛生法は、対象労働者の月40時間を超える健康管理時間が100時間を超えた場合(≒法定時間外労働が月100時間を超えた場合)は、医師の面接指導を受けさせることを使用者に義務付けている。

また高度プロフェッショナル以外の制度についても、使用者は1ヶ月の時間外労働が80時間を超えた労動者をリストアップして、産業医に報告する義務があるため、どの制度を採用したとしても、毎月の勤怠データを記録しなければならない点に注意が必要である。

  • この記事を書いた人

山口光博

コンビニの店長やスーパーの販売課長を経て、31歳の時に管理畑に転職する。以後、20年以上にわたってあらゆる人事マネジメントの実務に携わる。上場準備企業の人事部長として人事制度改革を担当した後に独立、現在に至る。

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