勤怠ルールって知ってますか?
「勤怠(きんたい)ルール」とは、出勤や退勤、休暇など、勤務に関するルールのことです。
労働時間の上限や休日の最低日数などは「労働基準法」に規定されており、その規定を元に使用者が自社の「就業規則」を策定し、「勤怠ルール」を定めます。
ちょっと乱暴な言い方ですが、「雇用契約」とは労働者の手持ち時間を使用者に販売することですので、「勤怠ルール」をよく知っておかないと損をすることになります。
勤務時間のルール
法定労働時間
使用者は無制限に労働者を働かせることができるわけではありません。
労働時間は法令によって1日8時間まで、一週間で40時間までの上限が定められており、これを「法定労働時間」といいます。
(労働基準法第32条1~2項)
出退勤の時の着替え、始業や終業時の清掃、業務に関連した研修会に出席している時間は、どれも労働時間に含まれます。 (労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン 平成29年1月20日策定)
法定労働時間の例外①「36協定」の締結
労働基準法第36条に基づき、労働組合と使用者が「時間外労働・休日労働の協定(通称36協定)」を締結すれば、法定労働時間を超えて労働者を働かせることができます。
(労働基準法第36条)
全従業員の過半数が加入している労働組合であることが条件です。 労働組合の無い職場であれば、労働者の過半数を代表する者を選出すればOKです。
「36協定」を締結しても無制限に時間外労働をさせられるわけではなく、次のように「残業の上限時間」が設けられています。
(労働監督局「モデル就業規則」より転載)
法定労働時間の例外②「変形労働時間制」の導入
法定労働時間のもうひとつの例外に、「一か月単位もしくは一年単位の変形労働時間制」という制度があります。
これは一か月間もしくは一年間を平均して、労働時間が週40時間以内に収まるのであれば、特定の日または特定の週に、1日8時間もしくは週40時間を超えて労働することができます。
(労働基準法第32条の3~4項)
「36協定」は法定労働時間を超えて働くことができる制度ですが、「変形労働時間制」は月間もしくは年間トータルで法定労働時間内に収めなければなりません。
休憩時間
休憩できる時間
使用者は6時間を超える勤務の時は少なくとも45分、8時間を超える勤務の時は少なくとも60分の休憩を、勤務時間の途中に与えなければなりません。
(労働基準法第34条1項)
休憩の取り方
使用者は労働者に対して、休憩時間を一斉に与えなければなりません。ただし労使協定があれば、交代で休憩を取らせても構いません。
(労働基準法第34条2項)
「労使協定」とは、労働組合(もしくは労働者の過半数を代表する者)と使用者が、労働基準法が例外を認めた条項に対して、例外事項を取り決めたものです。
休憩時間は労働者に自由に利用させねばなりません。
(労働基準法第34条3項)
お昼休み中の電話当番など、自由に職場を離れられないような状態は勤務時間です。 (労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン 平成29年1月20日策定)
休日・休暇のルール
法定休日
法令により使用者は労働者に対し、週に1日もしくは一か月に4日以上の休日を与えなければなりませんが、この法令で定められた休日のことを「法定休日」といいます。
(労働基準法第35条)
労働基準法には、法定休日の決め方や明示の仕方について規定されていないため、法定休日を日曜日などに設定し、就業規則や雇用契約書に明示している企業が多い。
法定外休日
「法定休日」以外の休日を「法定外休日」といいますが、年間の歴日数から、法定休日と1年間の法定労働時間を差し引いた残りが「法定外休日」になります。
これは労働基準局の「モデル就業規則」に掲載されている「年間休日日数」の早見表ですが、1日8時間勤務の職場では、年間休日日数は105日になります。
仮に1年間を52週間とすると、法定休日は年間52日、法定外休日は53日です。
(労働監督局「モデル就業規則」より転載)
多くの企業では社員の福利厚生のために、夏季休暇や年末年始休暇(休業)などの制度を定めていますので、実際には年間で115日~125日程度の休日を取得できるようです。
休業日は会社が営業していない日(つまり労働の義務がない日)であり、休暇日とは自分が仕事を休む日のことです。
年次有給休暇
有給休暇の付与日数
給与は「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づいて支給されるので、仕事を休んだ日の給与は支給されませんが、「有給休暇制度」とは、給与が支給される休暇制度のことです。
就職して6か月経過し、その間に出勤日の8割以上を勤務すると年次有給休暇が付与されます。
以後1年ごとに新たな休暇が付与されるので、「年次有給休暇」といいます。
(労働監督局「モデル就業規則」より転載)
パートタイマーなどの短時間労働者についても年次有給休暇が付与されますが、契約労働時間によって付与される日数が異なります。
(労働監督局「モデル就業規則」より転載)
年次有給休暇の取得方法
「有給休暇制度」の目的は、労働者が経済的な心配をすることなく休暇を取得し、心身を休めて英気を養うことで、労働者の健康増進を図ることです。
したがって年次有給休暇は1日単位で取得することが望ましいのですが、労使協定を結ぶことで、年間5日分を限度として、1時間単位で有給休暇を取得することが可能です。
(労働基準法第39条4項)
なお平成31年4月施行の改正労働基準法から有給休暇の取得が義務化されました。使用者は毎年付与される年次有給休暇のうち、5日分を労働者に取得させる義務が生じます。
年次有給休暇は労働者の権利なので、休暇の取得に際しては、会社の許可や承認は不要であり、取得理由も会社に説明する義務はありません(届出のみ)。
使用者の権利
労働者が一斉に同じ時期に有給休暇を取得し、業務に支障をきたすことを防ぐために、使用者には労働者に対して、有給休暇の取得日を変更する権利(時季変更権)があります。
労働者が退職時に未消化の有給休暇を取得しようとする場合、使用者は時季変更権を行使できません。(労働者の希望通りに有給休暇を取得させねばなりません)。
勤怠記録の保存ルール
確認と記録の方法
使用者自身が労働者の出退勤を直接確認するか、タイムカード、ICカード、パソコンのログなどをもとに出退勤の時刻を確認し、記録しなければなりません。
(労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン 平成29年1月20日策定)
記録様式と保存期間
勤怠情報は「賃金台帳」「出勤簿」および「タイムカード」にそれぞれ記録し、賃金締め切り日から起算して3年間保管する義務があります。
(労働基準法第108~109条、労働基準法施行規則第54条)
<賃金台帳に記載する事項>
・氏名
・性別
・賃金計算期間
・労働日数
・労働時間数
・時間外勤務の時間数
・深夜勤務(午後10時~翌朝5時)の時間数
・休日出勤の時間数
・基本給と諸手当ごとの名称と金額
・賃金控除の理由(欠勤など)と金額 (労働基準法施行規則第54条)
勤怠データは雇用契約の基本
冒頭で述べたように、労働者は使用者に対して自分の手持ち時間を販売することで、対価として給与(賃金)をもらっています。
つまり勤怠管理がルーズな職場は、雇用契約の適正な履行も、給与計算の根拠も怪しいということになります。
勤怠記録の妥当性について職場に任せきりにするのではなく、みなさん自身がきちんとルールを理解し、定期的にチェックするようにしましょう。
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参考
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