障害年金の併給調整
社会保険
厚生年金保険と国民年金は2階建てと呼ばれ、老齢、障害、死亡など、同一の給付事由のものは併給される。ただし65歳以後は、給付事由の異なるものでも、併給される場合があり、障害基礎年金(=満額の老齢基礎年金)については、全ての厚生年金と併給できる。
労災保険
障害厚生年金および障害基礎年金は、障害の事由が労災か私傷病かを問わないため、労災保険の障害(補償)等給付が併給されることがある。この場合、労災保険の障害(補償)等給付の側で、一定の割合を減額調整することになっている。
労働基準法の災害補償
労災保険は、労働基準法に定める事業主の災害補償義務(業務災害に限る)が、事業主の資力不足によってきちんと履行されず、被災労働者が経済的に困窮することのないように、事業主の補償を代行する制度である。
もし、労働基準法にもとづき、事業主が被災労働者に対して補償を行うことになった場合は、障害厚生年金と障害基礎年金は、6年間を上限として支給停止される。なおこれまでに解説してきた併給調整の関係をまとめると、下表のとおりとなる。
労災保険から補償給付が行われる場合は、労働基準法の災害補償責任の履行はいったん猶予され、労災保険から実際に補償が行われた時に、事業主は免責される。
障害手当金の併給調整
厚生年金保険の障害手当金については、原則として他の制度から保険給付が行われる場合は、給付されない(そもそも受給権を取得しない)。
例外は健康保険の傷病手当金で、障害手当金の支給総額の範囲内で、健康保険の傷病手当金が支給停止される。
障害の程度が変わったとき
事後重症
初診の時点ではいずれの障害等級にも該当しなかったが、65歳になる前に重症化して、障害等級1〜3級(国民年金は1〜2級)に該当した時は、障害年金を給付する。
基準障害
障害等級2級以上に該当しなかったが、その後、新たな傷病(基準傷病)によって、65歳になる前に障害等級2級以上になった場合は、2級以上の障害年金を給付する。
その他障害
障害等級2級だったが、その後、新たに障害等級3級以下の障害が増えたことによって、障害の程度が増悪してしまった場合は、障害等級1級とする。
併合認定
障害等級2級以上だったが、その後、新たに障害等級2級以上の障害が増えた場合は、併合してひとつの障害年金に1本化した上で、保険給付する。
障害年金の併給調整のまとめ
厚生年金は障害等級3級に注意
厚生年金は障害等級3級以上であれば、65歳以後も引き続き障害年金を受給でき、老齢年金とどちらかを選択することになる。ただし65歳以後に、障害状態の増悪によって年金改定(増額)を請求できるのは、2級以上となっている点に注意が必要である。
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