変形労働時間制の趣旨
労基法の労働時間管理の例外
労働基準法は、法定労働時間を1日8時間、1週間40時間とし、事業主が、法定労働時間を超えて労働者を働かせる場合は、労使協定の締結および法定労働時間の超過分に対する割増賃金の支払いを義務付けているが、これらの例外的取り扱いを認めるのが変形労働時間制である。
変形労働時間制の導入メリット
時期によって業務の繁閑が生じる事業では、閑散期は従業員の手待ち時間が発生し、繁忙期は残業代が嵩んで経営効率が悪いが、変形労働時間制によって閑散期の所定労働時間を短縮する代わりに、繁忙期は法定労働時間を超えて(法定内とみなして)労働者を就業させられる。
4つの変形労働時間制
1年単位の変形労働時間制
1ヶ月超〜1年以内の任意の期間において、週の平均労働時間が法定労働時間内に収まっているのであれば、特定の日もしくは特定の週に、法定労働時間を超えて、労働者を就業させられる制度で、季節によって業務に繁閑が生じる業種や業態に適している。
導入にあたっては、労使協定を締結して所轄の労働基準監督署に届出し、変形労働時間制を実施中であっても、労働時間の上限は1日10時間以内、1週間52週間以内とすること、3ヶ月以上の期間で実施する場合には、年間労働日数を280日以内とするなどのルールがある。
1ヶ月単位の変形労働時間制
1ヶ月の中で、週の平均労働時間が法定労働時間内に収まっているのであれば、繁忙期(日)に法定労働時間を超えて、労働者を就業させられる制度。たとえば給料日や月末など、月の特定時期に業務が繁忙となるビジネスに適している。
導入する場合は、就業規則に規定するか、労使協定を締結して所轄の労働基準監督署に届出するかのいずれかの方法で行う。なお、1年単位の変形労働時間制のように、1日もしくは1週間の労働時間の上限などは設けられていない。
1週間単位の変形労働時間制
1週間の労働時間が法定労働時間内に収まっているのであれば、特定の日に10時間まで労働者を就業させられる制度。週のうち特定の曜日に業務の繁閑が生じる業種や業態に適した制度だが、実施できるのは従業員30人未満の小売業、旅館業、料理店、飲食店に限られる。
労働基準法において、従業員10人未満の商業、接客娯楽業、金融業、保健衛生業は、法定労働時間を週44時間とする特例があるが、この特例は1週間単位の変形労働時間制とは併用できない。つまり事業者は週44時間か1日10時間のどちらかを選択しなければならない。
フレックスタイム制
フレックスタイム制は、1ヶ月超〜3ヶ月以内の期間において、始業と終業を労働者の判断に委ねるとした制度で、子育て世帯や家族の介護をしている労働者にとっては、非常に働きやすい制度となっている。
フレックスタイム制の導入には、就業規則に規定し、さらに労使協定の締結も必要となる。また実施期間が1ヶ月を超える場合は、週の労働時間を50時間以内とするなど、他の制度に比べて導入や実施の要件が厳しくなっている。
変形労働時間制における注意事項
時間外アリなら労使協定は2つ
変形労働時間制を導入しても、法定外労働が発生する場合は、変形労働時間制にかかる労使協定のほかに、36協定も締結しなければならないので注意が必要である。
事後の勤務シフトはNG
4つの変形労働時間制に共通する原則は、あらかじめ労働日と日ごとの労働時間を決めて、労働者に周知しなければならないことである。その時々の業務の繁閑に応じて、直近の勤務シフトを決めるようなやり方は、変形労働時間として認められない。
未成年者と妊産婦
未成年者は、1日8時間かつ1週間48時間までという条件付きで、例外的に1ヶ月単位もしくは1年単位の変形労働時間制の適用が認められている。妊産婦が請求した場合は、変形労働時間制で就業させられないが、フレックスタイム制のみ就業制限の対象外である。
変形労働時間制のまとめ
変形労働時間制の導入に際して
導入の参考となるように、4つの変形労働時間制の主なポイントを整理してみた。リアル店舗においてフレックスタイム制は実施が難しいかもしれないが、販売データを時系列で分析するなどして、自店に適した変形労働時間制を検討してみるとよいだろう。
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変形労働時間制の実施に際して肝となるのが勤怠実績の管理。勤怠管理が杜撰だと、変形労働時間制にかかる労使協定と36協定のダブル違反を犯してしまうリスクが高い。ゆえに小規模事業者でも導入できる老舗アマノの勤怠管理システムは必須のツールである。
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