こんな費用、療養費として払い戻しを受けられるかもしれません

「治療用のコルセットや靴型装具を自費で作ったが、国保から費用が戻ると聞いた」
「マイナ保険証や資格確認書を忘れて受診し、窓口で全額を支払ってしまった」
歯科クリニックの院長先生やスタッフ、あるいはそのご家族に、こうした思いがけないケースが生じることがあります。
このように医療費等を全額自己負担した場合でも、加入している歯科医師国民健康保険組合(以下、国保組合)へ「療養費」の支給申請を行えば、後から一定額の払い戻しを受けられることがあります。
本記事では、各歯科医師国民健康保険組合における療養費の申請手続きのうち、特に発生頻度の高い「治療用装具」と「全額自己負担受診(立替払)」の2パターンを中心に、手続きの流れや注意点を解説します。
歯科医師国保の療養費とは?支給対象となるケース
公的医療保険制度では、受付でマイナ保険証や資格確認書を提示し、自己負担分の医療費のみを窓口で支払う「現物給付」が原則です。
しかし、やむを得ない理由で医療費を全額自己負担した場合や、医師の指示で治療用装具を作成・購入した際などは、事後に申請すれば、支払った費用の一部が払い戻されます。これが「療養費」の制度です。
療養費として支給される額は、保険診療の基準で再計算した額から自己負担割合相当額(一部負担金)を差し引いた金額です。
実際に支払った費用の全額が戻るわけではない点にご注意ください。
療養費の支給対象となる主なケース
- 治療用装具等の作成・購入(医師の指示によるもの)
- コルセット
- 靴型装具
- 小児弱視等の治療用眼鏡、など
- 全額自己負担受診(立替払)
- マイナ保険証や資格確認書を提示できず、窓口で医療費を全額支払った(10割負担した)
- 近くに保険医療機関がなく、緊急でやむを得ず保険外の医療機関を受診した
- 以前加入していた公的医療保険の保険証や資格確認書で受診し、その医療費を前の保険者へ返還した、など
- はり・きゅう、マッサージ代(医師の指示によるもの)
- 生血液の輸血費用
- 海外の医療機関での診療費用(海外療養費)
次章では、これらの中でも特に申請頻度が高いと思われる「治療用装具等」と「全額自己負担受診(立替払)」について、申請手続きの流れを解説します。
歯科医師国保組合における療養費の申請手続き
手続きの細部は国保組合ごとに異なります。
ここでは一般的な流れを紹介しますので、実際に申請する際は、加入する国保組合の最新の案内をご確認ください。
療養費の申請期限:時効は2年
療養費の申請期限は、費用を支払った日の翌日から2年以内です。
この期限を過ぎると、時効により権利が消滅します。
以前加入していた公的医療保険の保険証や資格確認書で受診してしまったときは、その保険者に医療費を返還したうえで、国保組合へ療養費を申請することになります。
この場合の時効の起算日については、加入している国保組合へご確認ください。
申請書の提出先
クリニックが加入する歯科医師国保組合に提出します。
申請書の様式
申請には、各国保組合が指定する「療養費支給申請書」を使用します。
組合によっては、申請する費用の種別ごとに異なる様式が用意されていることがあります。
その場合は、申請内容に合った様式を選びましょう。
申請書は国保組合のホームページからダウンロードできることが多いものの、電話等での取り寄せが必要な組合もあります。
添付書類
必要書類は費用の種類や加入する国保組合によって異なります。
そのため、以下では代表的な添付書類を紹介します。
治療用装具を作成・購入したときの添付書類
全装具共通で必要な書類
- 領収書
- 装具の名称・種類、義肢装具士の氏名などが記載されたもの。内訳明細の記載を求める国保組合もあります。
- 原本の提出が一般的ですが、組合によってはコピー可、または、原本返却の相談が可能な場合もあります。
- 医師の証明書・意見書など
- 医師が証明した「意見書」「診断書」「作成指示書」「装具装着証明書」など。
- 原本の提出が一般的です。
- その他
- 国保組合によっては、見積書や請求書などの添付を求められることもあります。
特定の装具のみ必要な書類
- 靴型装具の場合
- 作成した装具の現物写真
- 治療用眼鏡等の場合
- 視力検査の結果が分かる書類(作成指示書などに検査結果が記載されている場合は不要)
全額自己負担受診の添付書類
- 領収書
- 一般的に原本の提出が必要です。
- 診療報酬明細書(レセプト)
- 封緘されている場合は開封せずそのまま提出するよう指定している国保組合がありますので、注意しましょう。
第三者行為(交通事故など)による傷病の場合
交通事故や暴行など、第三者の行為によって受けた傷病に伴う療養費の申請では、別途、国保組合への申出や書類の提出が必要となる場合があります。
該当する際は、申請前に国保組合へ確認するとよいでしょう。
療養費の申請手続きに関するよくある質問
療養費の申請手続きは、クリニック(事業主)側が行うのですか?
原則として、療養費の手続きはスタッフ(国保組合の組合員)本人が行うものであり、クリニック側に申請書の作成や提出を行う義務はありません。
ただし、スタッフから手続きについて相談を受けることは十分に考えられます。申請書の入手方法や提出先、添付書類などをスムーズに案内できれば、本人も安心して手続きを進められるでしょう。申請から振り込みまで、どのくらいの期間がかかりますか?
申請内容や加入する国保組合によって異なりますが、2~3か月ほどが目安です。
申請書の記入漏れや添付書類の不足などの不備があると、さらに時間がかかることがあります。余裕をもって申請するようにしましょう。業務中や通勤途中のケガで作成した装具も、国保組合に療養費申請できますか?
原則として申請できません。業務上・通勤途中の傷病については労災保険の対象となるためです。
判断に迷う場合は、事前に管轄の労働基準監督署や加入する国保組合へご相談ください。
療養費の申請は「2年の時効」と「国保組合による違い」に注意しましょう
療養費は、医療費等を全額自己負担した場合に、事後の申請によって払い戻しを受けられる制度です。
申請期限は支払日の翌日から2年間ですが、申請書の様式や添付書類は国保組合によって異なります。
いざという時に戸惑わないよう、クリニックが加入している国保組合の案内を確認し、基本的な手続の流れを押さえておくと安心です。
なお、当事務所では、歯科クリニックの労務管理や社会保険手続きなどの事務代行を承っております。
手続きでお困りの際や事務負担の軽減をお考えのときは、お気軽にご相談ください。

本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。

