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003_休日休暇のFAQ

【有給5日取得義務】年次有給休暇は前年度繰越分から充当?それとも当年度分から?

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

首をかしげる医師

当院は歯科医師2名、歯科衛生士6名、歯科助手・受付4名が勤務する歯科クリニックです。この度、労務担当のスタッフから「年間10日以上有給を付与する歯科衛生士には年5日の取得義務がありますが、今年度付与した日数から使用しないと法律違反になるため、繰越分と当年度分を分けて管理すべきです」と指摘を受けました。

当院では2026年4月に20日の有給を付与した衛生士がおり、前年度からの繰越が5日あるため合計25日となっています。この場合、5日取得義務の充当は繰越分からではダメなのでしょうか。管理方法も含めて教えてください。

ご相談への回答

できるビジネスパースン

結論から申し上げますと、年次有給休暇の年5日取得義務(労働基準法第39条第10項)を果たすにあたって、「当年度に付与された有給」と「前年度から繰り越した有給」を厳密に区別してカウントしなければならない法的義務は一切ありません。

したがって、前年度からの繰越分(5日)から先に消化させたとしても、年5日の取得義務を果たしたものとして適法にカウントされます。労務担当スタッフの方の認識は法的な解説と混同されているようですので、以下の論点に沿って分かりやすく整理いたします。

行政解釈(通達)における明確な基準

厚生労働省が示している労働基準法の行政解釈(改正労基法Q&A)において、「年5日の取得義務において、労働者が実際に取得した年次有給休暇が、当年度に付与されたものか、前年度の繰越分であるかについては問わない。」と明確に定められています。

本制度の主旨は、有給休暇の取得率を改善し労働者の身心を休養させることにあります。そのため、消化された有休が「いつ付与されたものか」という枠組み自体は、法律上のカウントにおいて全く問題になりません。

「先入れ・先出し」原則とモデル就業規則

労働基準法第115条により、年次有給休暇の請求権は「2年間」で消滅時効を迎えます。もし当年度付与分から優先して使用するルールにしてしまうと、古い繰越分が使用されないまま時効で消滅してしまい、労働者にとって著しく不利な運用となってしまいます。

厚生労働省のモデル就業規則においても、「繰り越された年次有給休暇とその後新たに付与された年次有給休暇のいずれも取得できる場合は、繰り越された年次有給休暇から取得させること」を前提として作成されています。

法律上の消滅時効(2年)を踏まえ、有効期限が迫っている古い有休から順次消化する「先入れ・先出し(FIFO)」で管理することが、スタッフの納得感と権利保護の観点からも最も望ましい実務運用です。

歯科現場における実務的な有給管理の要領

診療予約が詰まりやすい歯科クリニックの現場では、歯科衛生士や受付スタッフの有休取得管理に頭を悩ませる院長先生も少なくありません。しかし、帳簿上「当年度分」「繰越分」と二重に分けて年5日達成率を計算・管理する必要はありません。

有休管理簿(労働基準法施行規則第24条の7に基づく「年次有休休暇管理簿」)上は、付与日・付与日数・実際に取得した日数および年月日が正しく記録されていれば十分です。基準日からの1年間で「計5日以上」の消化実績が確認できれば、行政指導等の対象になることはありません。

本件のポイント

気づきを得た白衣の男性
  • 年5日有給取得義務のカウントにおいて、当年度付与分と前年度繰越分を区別する法的義務はない。
  • 労働基準法の消滅時効(2年)を考慮し、有効期限が近い「前年度繰越分」から優先して消化させる「先入れ・先出し」運用が標準的かつ適法である。
  • 労務管理上、帳簿を二重管理する必要はなく、年次有給休暇管理簿で基準日から1年間に「合計5日以上」取得できているかを確認・記録すればよい。

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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/人事コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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