人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。
依頼者からのご相談

当院(外来専門の歯科クリニック)の所定労働時間は9:00〜18:00(休憩12:00〜13:30、実労働時間7.5時間)です。先日、ある歯科助手から「私用により本日は16:30で早退させてほしい。ただし、昼休憩を一切取らずに働いたので、勤務記録上は18時まで働いたことにしてほしい。」と申し出がありました。
なお当院は昼休憩も含めて12:00~14:00まで休診時間を設けております。本人は「午前診療の後片付けや午後診療の準備など、休憩せずに通しで働いたのだから実労働時間は同じだ。したがって18:00に退勤したことにしても問題ないはずだ。」と主張しています。このような希望を承諾しても問題はないでしょうか?
ご相談への回答

結論から申し上げると、退勤時刻は実際の時間で記録し、事実に基づき給与計算を行わねばなりません。また休憩を取得せずに就労した部分について、もし勤務の実態が認められるのであれば、その時間について給料を支払わねばなりません。
なお職員の自己判断により、貴院の就業規則(休憩時間)を変更することは、貴院のガバナンスを崩壊させる要因となるため絶対に認めるべきではありません。本ケースにおいても、結果的に貴院は労働基準法違反(休憩付与義務違反)を犯したことになります。
客観的労働時間把握義務違反・賃金台帳の虚偽記載
16:30に退勤した事実があるにもかかわらず、タイムカードや出勤簿に「18:00退勤」と記録することは、労働安全衛生法第66条の8の3に定められた「客観的な方法による労働時間の把握義務」に違反します。さらに虚偽の記録に基づき給与計算を行うことは、労働基準法第108条で義務付けられている「賃金台帳の虚偽記載」に該当します。
休憩時間の付与義務違反
労働基準法第34条では、労働時間が6時間を超える場合に少なくとも45分、8時間を超える場合に少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならないと規定しています。もし貴院において休憩時間に業務がずれ込むことが常態化し、院長がそれを黙認していたのであれば、本ケースの休憩時間についても「黙示の指示」があったとみなされます。
ガバナンスの崩壊リスク
就業規則に定められた休憩時間を、スタッフが自己の判断で取得せず、それを早退時間の相殺に充てることは認められません。職場の休憩時間を決定する権限は院長に属します。これを個人の都合で変更することを認めると「今日は休憩なしで早く帰る」などといった身勝手なルールが生まれ、職場の規律やモラルが崩壊する恐れがあります。
本件のポイント

- 出退勤および休憩の時刻は事実に基づき記録しなければならず、また給与も正しい勤務実績に基づき計算されなければならない。
- 就業規則で定められた休憩時間をスタッフが自己判断で不取得とし、早退時間と相殺することは指示命令権の観点から認められない。
- 悪しき前例を作ると、職場の規律やモラルの乱れにつながり、最終的に医療事故(過誤)や診療体制の崩壊を招くリスクがある。
本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。
