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001_労働契約のFAQ

【有期雇用】歯科助手等の一般職でも「通算5年」雇用は可能?3年上限ルールとの混同を解消する

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

首をかしげる医師

当院で勤務して3年目になる有期雇用の歯科助手(Aさん)についての相談です。非常に優秀で、受付業務から診療補助まで幅広くこなしてくれるため、今後も長く働いてもらいたいと考えています。

しかし、事務長から「労働基準法では、歯科助手のような一般職は『3年』までしか契約できないはずだ。5年雇用して無期転換権が発生する前に、一度契約を終了(雇止め)すべきではないか?」と指摘されました。

一方で、歯科医師や歯科衛生士などの専門職であれば「5年」まで契約できるという話も聞き、混乱しています。そこで以下の点について教えてください。

  1. 歯科助手のような一般職は、本当に「通算3年」までしか雇用できないのでしょうか?
  2. 労働基準法の「3年上限」と、労働契約法の「5年ルール(無期転換)」の違いを整理して教えてください。
  3. 今後もAさんに継続して働いてもらうために、契約更新時に注意すべき法的ポイントはありますか。

ご相談への回答

できるビジネスパースン

有期雇用の期間制限については、複数の法律が絡み合っているため、誤解が生じやすい部分です。結論から申し上げますと、歯科助手の方であっても、1回あたりの契約期間を3年以内にとどめ、更新を繰り返すことで「通算5年」を超えて雇用することは法的に全く問題ありません

労働基準法が定める「1回の契約期間」の上限

労働基準法第14条では、有期労働契約の「1回あたりの契約期間」に上限を設けています。

  • 原則(最長3年): 歯科助手や受付などの一般職が該当します。
  • 例外(最長5年): 医師、歯科医師、薬剤師などの高度な専門的知識等を有する労働者(12種の国家資格等)、または満60歳以上の労働者が該当します。

ここで重要なのは、この「3年」や「5年」はあくまで「1回の契約で定めてもよい期間」の上限であるという点です。例えば、歯科助手と「1年契約」を締結し、それを3回、5回と更新していくことは制限されていません。事務長が懸念されている「通算3年までしか雇えない」というルールは存在しません。

労働契約法の「5年ルール(無期転換権)」

一方で、労働契約法第18条には、いわゆる「5年ルール」が存在します。

  • 内容: 同じ事業主との間で有期労働契約が更新され、通算契約期間が5年を超えた場合、労働者が申し込むことで「期間の定めのない労働契約(無期労働契約)」に転換できる権利(無期転換申込権)が発生します。
  • 使用者の義務: 労働者がこの権利を行使した場合、使用者はそれを拒否することはできず、現在の契約期間が満了した翌日から自動的に無期雇用へと転換されます。

つまり、労働基準法の「3年上限」は人身拘束を防ぐための1回の期間制限であり、労働契約法の「5年ルール」は雇用の安定を図るための無期転換の仕組みです。これらは全く別の目的で共存しているルールです。

実務上の留意点と2024年法改正の内容

今後もAさんに活躍してもらうためには、以下の実務対応が重要です。

  • 契約更新の手続き: 更新の期待権が生じている場合、合理的な理由のない「雇止め」は解雇と同様に無効とされるリスクがあります。
  • 無期転換申込機会の明示(2024年4月改正): 無期転換申込権が発生する更新タイミングの労働条件通知書には、「無期転換を申し込める旨(申込機会)」と「転換後の労働条件」を記載して明示する義務があります。
  • 不利益変更の回避: 無期転換後の労働条件(給与等)は、別段の定めがない限り現在の有期契約時と同一になります。条件を変更(例えば賞与の減額など)する場合は、合理的な理由と本人の合意が必要です。

本件のポイント

気づきを得た白衣の男性
  • 歯科助手の「1回の契約期間」の上限は3年だが、更新を繰り返して通算5年を超えて雇用することは可能である。
  • 通算5年を超えた時点で労働者に「無期転換申込権」が発生し、使用者はこれを拒否できない。
  • 「無期転換させたくないから5年直前で雇い止める」行為は、客観的・合理的な理由がない限り不当解雇とみなされるリスクがある。
  • スタッフに長く定着してもらうためには、早い段階で無期転換へのキャリアパスを提示し、安心感を与えることがガバナンスとES(職員満足)の向上に繋がる。

歯科助手はクリニックの「チーム医療」を支える欠かせない存在です。法律の誤解から優秀な人材を手放すことのないよう、正しい期間管理と誠実な労働条件の明示を心がけましょう。

本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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