当サイトはアドセンス広告およびアフィリエイト広告を利用しています。

003_休日休暇のFAQ

【端数処理】子の看護休暇を有給化。17時55分までの残業と18時からの休暇、5分間の計算ミスを防ぐ

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

当院では、子育て中の歯科衛生士や助手を応援するため、法定の「子の看護休暇」を有給化し、さらに1時間単位での取得も認めることにしました。

しかし、事務長から勤怠管理システムの設定について相談を受けました。例えば、あるスタッフが「子供を病院に連れて行くため、18時から1時間分(終業まで)の看護休暇を取りたい」と申請し、実際には17時55分まで片付け作業をしてから打刻した場合です。

  1. 17時55分から18時までの「5分間」は、労働時間として残業代を支払うべきでしょうか? それとも休暇時間と相殺して「なかったこと」にしてもよいのでしょうか?
  2. 当院のシステムは「分単位」の計算が可能ですが、数分程度の残業や遅刻を切り捨てて処理することは法的に認められますか?
  3. 休暇と勤務時間が重複してしまった際の、不当な賃金カットを防ぐための正しい運用方法を教えてください。

スタッフの善意による数分の残業が、意図せず「未払い賃金」にならないよう、正確な事務処理を整えたいと考えています。


ご相談への回答

福利厚生の充実は素晴らしい取り組みですが、有給の休暇と実労働時間が重なる場面では、労働基準法上の「賃金全額払いの原則」に注意が必要です。結論から申し上げますと、たとえ5分であっても労働の実態がある限り、その時間は労働時間としてカウントし、休暇時間と勝手に相殺することはできません

労働時間と休暇時間の厳格な切り分け

労働基準法において、賃金は「1分単位」で計算するのが原則です。

  • 労働時間の認定: スタッフが18時からの休暇開始直前まで業務(器具の滅菌や翌日の準備など)を行っていたのであれば、その時間は使用者の指揮命令下にある「労働時間」に該当します。
  • 相殺の禁止: 「5分早く切り上げたのだから、休暇時間を5分短縮したことにする」といった、日ごとの微細な相殺処理は、賃金計算の透明性を損なうため避けるべきです。
  • 不当な賃金カットの回避: 5分の残業を30分の残業として切り捨てたり、逆に5分の遅刻を30分の欠勤としてカットしたりする処理は、賃金全額払いの原則に反し違法となります。

勤怠システムでの「分単位」管理と修正

多くの勤怠システムでは、打刻された時間と、実際に給与計算に用いる「計算上の時間」を分けて管理できるようになっています。

  • 修正と承認: 17時55分に作業を終えて18時から休暇に入るはずが、退勤打刻が18時5分になった場合、その10分間が「明らかに業務ではない(単なる私語や着替えなど)」のであれば、システム上で終業時刻を18時に修正し、上長が承認することで、不必要な時間外労働の発生を抑えることが可能です。
  • 認められる端数処理: 唯一認められている例外は、「1ヶ月の」時間外労働・休日労働・深夜労働それぞれの合計時間に対して、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることだけです。

実務的な運用と職場ルールの徹底

事務負担を軽減しつつガバナンスを守るためのポイントは、システムの設定よりも「現場のルール」にあります。

  • 定刻終業の配慮: 看護休暇や介護休暇を取得するスタッフに対しては、上長や同僚が協力して「定刻どおりに業務を切り上げられるよう」配慮することが、休暇と勤務時間の重複を防ぐ最も効果的な解決策です。
  • 休暇の単位設定: 育児・介護休業法における子の看護休暇は、原則として「時間単位」での取得であり、「分単位」で付与する法的義務はありません。システム上も「1時間単位」で休暇を管理し、それ以外の端数時間は通常の「欠勤控除」や「時間外手当」として1分単位で処理するのが実務上スムーズです。

本件のポイント

  • 1分単位の労働時間管理が原則であり、休暇時間との安易な相殺は「賃金不払」のリスクを伴う
  • 日ごとの労働時間の端数切り捨ては認められず、未払い残業代として是正勧告の対象となる恐れがある
  • 「1ヶ月の合計」における30分単位の端数処理は認められているが、日々の正確な記録が前提となる
  • 勤怠システムの設定だけでなく、休暇取得者が定時でスムーズに退勤できるよう、周囲のサポート体制を整えることがガバナンス強化に繋がる

歯科クリニックは予約制で動くため、診療が延びることもありますが、育児や介護と両立するスタッフが安心して制度を利用できるよう、客観的な記録に基づいた誠実な賃金管理を心がけましょう。

本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

-003_休日休暇のFAQ