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105(事務手続)_給与計算

歯科医院における給与所得の源泉徴収票提出

焦って書類を書く白衣の男性のイラスト

歯科クリニックが押さえるべき源泉徴収票提出手続きの新たな変更点

年末調整が終わるとひと安心、と思いがちですが、給与計算に関する年末年始の事務はそれだけでは終わりません。
その後に控えているのが、「給与所得の源泉徴収票」と「給与支払報告書」を税務署や市区町村へ提出する手続きです。

実は、この源泉徴収票の提出手続きが、令和8年分(2027年1月以後に提出すべき分)から大きく変わります。
市区町村へ給与支払報告書を提出すれば、税務署への源泉徴収票の提出が原則不要になるのです。
これに伴い、提出対象となる受給者の範囲なども見直される見込みです。

本記事では、歯科クリニックの院長先生や事務担当者の方に向けて、給与所得の源泉徴収票の提出に関する基本的な知識と変更点について分かりやすく解説します。

年末調整の概要はこちら

給与所得の源泉徴収票とは

給与所得の源泉徴収票の基本

給与所得の源泉徴収票とは、給与の支払者(事業主など)が全従業員(受給者)に対して作成・交付する書類です。
その年の給与支払総額や、源泉徴収した所得税額などが記載されています。

作成後は受給者へ交付するだけでなく、以下の提出が必要です。

  • 源泉徴収票税務署へ提出
  • 給与支払報告書(源泉徴収票とほぼ同等の様式): 各市区町村へ提出

提出期限はいずれも、翌年の1月末日と定められています。

法定調書や法定調書合計表との関係

源泉徴収票は、所得税法などで規定された「法定調書」の一つです。

法定調書には、給与所得の源泉徴収票のほかに以下のようなものがあります。

  • 退職所得の源泉徴収票
  • 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書
  • 不動産の使用料等の支払調書

これらを税務署へ提出する際は、各法定調書の内容を集計した一覧表である「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(以下、法定調書合計表)」を添付します。

ただし、後述する「みなし提出の特例」が源泉徴収票に適用される場合は、合計表の提出も原則不要となります。

対象となる事業主

歯科クリニックでスタッフに給与・賃金・賞与などを支払っている場合は、個人・法人を問わず、源泉徴収票の作成・交付、および提出を行う義務が生じます。

提出範囲(令和8年分以後)

源泉徴収票は給与を支払った全ての者に対して作成・交付する必要がありますが、税務署への提出が必要な範囲は以下のように定められています。

令和8年分以後の提出範囲

年の中途で退職した者で同年中の給与支払額が30万円以下である場合を除き、原則として全員分が提出対象となります。

(参考)令和7年分までの提出範囲
  • 年末調整をしたもの
    • 法人の役員:150万円超
    • 弁護士・税理士等:250万円超
    • その他(一般の従業員など):500万円超
  • 年末調整をしなかったもの
    • 中途退職者:250万円超(役員は50万円超)
    • 全員:主たる給与が2,000万円超
    • 扶養控除申告書を提出しなかった者(乙欄適用者等):50万円超

※上記の金額はすべて「給与等の支払金額」です。

源泉徴収票の提出手順

提出期限

源泉徴収票の提出期限は、毎年1月31日(1月31日が土日祝日の場合はその翌営業日)です。

提出先と提出方法

提出先は、クリニックの所在地を管轄する税務署です。

提出方法は書面や光ディスクの郵送または持参、e-TAXのいずれも可能です。

税務署によっては、郵送・持参による申告書・申請書の受付を「業務センター」で一括して行っている場合があります。事前に国税庁のホームページ等で管轄税務署の書類提出先(送付先)をご確認ください。

源泉徴収票のみなし提出の特例(令和8年分から)

令和8年分(2027年1月1日以降に提出すべきもの)の源泉徴収票からは、市区町村に「給与支払報告書」を提出することで、税務署にも源泉徴収票が提出されたものとみなされる「みなし提出の特例」が適用されます。

これにより、税務署へ別途源泉徴収票を提出する手間がなくなります。

この特例は令和8年以後の源泉徴収票から適用されます。
令和7年分までは従来どおり、税務署と市区町村それぞれへの提出が必要です。

法定調書合計表の取り扱い

みなし提出の特例により源泉徴収票の税務署提出が不要となる場合、「法定調書合計表」の提出も原則不要となります。

ただし、以下に挙げる別の法定調書がある場合は、引き続き合計表の提出が必要です。

  • 退職所得の源泉徴収票
  • 報酬・料金等の支払調書
  • 不動産の使用料等の支払調書 など

電子的提出の義務化基準

みなし提出の特例の開始に伴い、e-Tax・光ディスク等による法定調書の電子的提出が義務付けられる基準が、従来の「前々年に提出すべきであった枚数が100枚以上」から「30枚以上」に引き下げられます。

この枚数は、「改正前の提出範囲」で税務署に提出すべきであった枚数で判定する点に注意が必要です。

また、判定の対象には、みなし提出となった源泉徴収票の枚数も含まれます。

従業員への源泉徴収票の交付は引き続き必要

みなし提出の特例によって税務署への提出が不要となった後も、従業員本人への源泉徴収票の交付義務はなくなりません。

従来どおり、必ず各スタッフへ交付してください。

よくある質問

令和8年分以降の給与所得の源泉徴収票は、市区町村への給与支払報告書の提出のみで税務署へ提出は不要になりますか?

はい、みなし提出の特例が適用されるため、原則として税務署への提出は不要です。
ただし、退職所得の源泉徴収票や報酬に係る支払調書など、他に提出義務のある法定調書がある場合は、それらを別途税務署へ提出する必要があります。

パートスタッフの源泉徴収票(給与支払報告書)も提出が必要ですか?

令和8年分以降は、原則として全員分の提出が必要です。
源泉徴収票の提出範囲が全受給者に拡大されるため、パートスタッフも対象となります。ただし、年の途中で退職しており、かつその年の給与支払額が30万円以下である場合は提出不要です。
なお、市区町村へ提出する給与支払報告書については、適正な課税処理の観点から、支払額が30万円以下の退職者であっても提出することが推奨されています。

源泉徴収票を電子的提出(e-Tax・光ディスク等)する義務があるかどうか、どのように判断すればよいですか?

前々年に提出すべきであった源泉徴収票の枚数(法改正前の提出範囲に基づく)が30枚以上の場合、電子的提出が義務づけられます。
【例】
①支払金額550万円(年末調整済)20枚+支払金額40万円(乙欄適用者)15枚 → 電子的提出義務なし
②支払金額550万円(年末調整済)20枚+支払金額60万円(乙欄適用者)15枚 → 電子的提出義務あり

まとめ:令和8年分から変わる源泉徴収票の提出手続き

令和8年分(2027年1月以後に提出すべきもの)から、給与所得の源泉徴収票の提出手続きが大きく変わります。

市区町村への給与支払報告書の提出が、税務署への源泉徴収票の提出を兼ねるようになるため、事務負担の軽減が期待できます。

一方で、スタッフへの交付義務や1月31日の提出期限は従来と変わりません。

制度改正の内容を早めに把握し、期限までに滞りなく対応できるよう、事務体制を早めに整えておきましょう。


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  • この記事を書いた人

福島智美/社会保険労務士(未登録)

慢性期病院やリハビリ病院で労務管理を担当。転職先で山口の部下となった縁で以後の行動を共にする。文学博士前期課程修了。親族に医療従事者多数。

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