失業手当(基本手当)とは?
求職者給付の目的と種類
世間一般に知られている失業手当は、正しくは求職者給付という。求職者給付は、失業中の者が求職活動に専念できるよう、雇用保険から経済的支援を行うことで、早期就職を促進するものである。求職者給付には、雇用保険被保険者の資格に応じ、次の4種類がある。
- 基本手当(一般の被保険者)
- 高年齢求職者給付金(65歳以上の高年齢被保険者)
- 特例一時金(季節労働者)
- 日雇労働求職者給付金(日雇労働者)
基本手当の給付要件
本記事では、一般の被保険者が失業した時に給付される、基本手当について解説してゆく。早速だが、基本手当は被保険者が失業しただけでは給付されない。就労の意思と能力があり、ハローワークに職業紹介を申し込んだ者のうち、一定要件を満たす場合に給付される。
基本手当はいくらもらえるか?
受給資格の確認
離職日以前の2年間を算定対象期間といい、算定対象期間の2年間に被保険者期間が12ヶ月以上あれば、基本手当を受給することができる。ただし被保険者期間は、原則として賃金支払の基礎となった日数(出勤日数)が11日以上ない月は、12ヶ月に含めることはできない。
基本手当日額の算定
基本手当日額とは、基本手当の1日あたり支給単価をいい、賃金日額×給付率で算定される。賃金日額は、退職日前6ヶ月間の1日あたり平均賃金であり、給付率は、離職時の年齢と賃金日額によって、80%〜50%の間で決定される。
なお賃金日額と基本手当日額には、それぞれ上限額と下限額が設けられており、毎年8月に改定されることになっている。
令和6年8月〜賃金日額・基本手当日額の変更について(厚生労働省)
所定給付日数の決定
基本手当の給付日数は、離職事由と離職時の年齢、算定基礎期間によって下表のとおり決められている。算定基礎期間は雇用保険に加入していた期間をいい、転職などで勤務先が変わった場合は、失業期間が1年以内で、なおかつ基本手当を受給しなかった場合に限り、通算できる。
離職事由のうち、就職困難者とは主に障害者等を、また特定受給資格者とは、会社の倒産により整理解雇された者等をいい、給付制限期間(後述)がなく、所定給付日数も長めである。
短時間就労した場合
基本手当を受給している間に、短時間バイトなどで収入を得た場合は、収入から1,310円を控除した額+基本手当日額が、賃金日額の8割を超えた部分について、基本手当を減額調整する。ただし1日の就労時間が4時間を超える場合は、その日の基本手当は支給停止される。
注意事項
待機期間と給付制限期間
基本手当は、離職後に管轄のハローワークに出向いて失業認定を受け、求職の申し込みをした後、7日間の待機期間を経て給付が開始されるが、自己都合退職の場合は、さらに2〜3ヶ月の給付制限期間があるため、待機7日+給付制限2〜3ヶ月間は基本手当を受給できない。
正当な理由なくハローワークの職業紹介を拒否すると、さらに1ヶ月間の給付制限が行われる。
受給期間
基本手当は原則として、離職日の翌日から1年以内に、所定給付日数を受給しなければならない。通常は退職してから自宅に離職票が届くまで約1週間かかり、自己都合退職の場合は、給付開始前に、待機期間と給付制限期間もあるが、これらも含めて1年以内となる。
出産や病気によって、長期的に求職活動ができなくなった場合は、受給期間が最大で4年間に延長される措置がある。
求職活動の実績
基本手当は4週間ごとに、ハローワークに出向いて失業認定を受けないと、給付されない。そして基本手当が支給されるためには、4週間のうち2回以上の求職活動の実績を申告しなければならない。なおインターネットで求人情報を閲覧しただけでは、求職活動とはみなされない。
たとえばハローワークで職業相談を受けると求職活動の実績となる。また実際に応募した場合は実績1回のみでも失業認定される。
失業手当(基本手当)のまとめ
不正受給は3倍返し!
基本手当の給付は、求職者の自己申告による要素が強いため、不正が起きやすい。そこで不正に基本手当を受給した場合は、不正受給した額の返還に加えて、不正受給額の2倍の納付金がペナルティとして科される(いわゆる3倍返し)。
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