障害になった時の社会保険
障害に対する社会保障制度
日本の社会保障制度は、①社会保険、②公的扶助、③社会福祉、④公衆衛生の4つから成り立っている。もし労働者が障害状態になって収入を得ることができなくなってしまった場合は、①社会保険から障害状態にある間について経済的な保障(保険給付)が行われる。
労働者の障害の原因が、労災(業務災害や通勤災害)であれば労災保険から、また労働者が国民年金や厚生年金保険に加入していれば、労災かどうかを問わず、それぞれの制度から障害等級に応じた障害年金もしくは障害一時金が給付されることになっている。
意外と知らない企業年金の障害給付
一般的に知られていないが、確定給付企業年金(DB)や確定拠出年金(企業型=DB、個人型=iDeCo)にも障害年金の仕組みがある。確定給付企業年金は実施機関ごとの任意となっているが、確定拠出年金は恒久的な制度として位置づけられている。
社会保険の3大障害給付
労災保険の障害給付
労働者が労災によって障害等級に該当した場合は、労働者の障害等級に応じて、障害年金もしくは障害一時金が支給される。障害年金は障害等級第1級〜第7級の重篤な障害の場合に、また障害一時金は障害等級第8級〜第14級の比較的軽微な障害に対して給付される。
労災保険の障害給付の額は、大まかにいえば障害状態になった時の給付基礎日額(≒平均賃金)に、障害第1級〜第7級であれば313日分〜131日分、障害等級第8級〜第14級であれば503日〜56日分が給付される。また年金の場合は、障害状態にある限り給付される。
なお障害給付が行われる時は、労災保険の療養給付と休業給付は行われない。その理由は、障害とは療養を続けても改善の見込みの無い状態(症状固定)をいい、また障害給付と休業給付はどちらも労働者が労働不能になった時の生活保障すなわち同じ目的の制度だからである。
厚生年金保険の障害給付
労働者が厚生年金保険に加入している場合は、障害厚生年金も給付される。労災保険の障害給付は労災による障害に対して給付されるが、厚生年金保険と国民年金の障害給付は、業務上かどうかを問わない。ただし両者が併給される場合は、労災保険側が減額調整される。
厚生年金保険は、障害等級1級〜3級に該当するか、もしくは初診日から1年6ヶ月経過した時に障害認定された場合に給付される。労災保険は障害が確定しない限り給付されないが、厚生年金保険は1年6ヶ月経過した時に、障害の状態であると認定されれば給付される。
障害厚生年金の額は、障害1級が自身の老齢厚生年金の1.25倍、障害2級〜3級が老齢厚生年金と同額となっている。障害状態にある労働者が老齢厚生年金を受給できる場合はどちらかを選択するが、保険加入期間が短い場合は、障害厚生年金の方が有利になることもある。
国民年金の障害給付
日本国内に住所を有する者は、国籍に関係なく20歳〜60歳まで国民年金に強制加入することになっている。そして国民年金に加入している者が、障害等級1級〜2級に該当(または初診日から1年6ヶ月経過)した場合は、労災の有無を問わず国民年金から障害給付が行われる。
障害基礎年金の額は、障害1級が老齢基礎年金の1.25倍、障害2級が同額となっている。老齢厚生年金が加入期間中の標準報酬によって受給額が異なるのに対し、老齢基礎年金は未納期間さえなければ全ての加入者が同額となる。また障害基礎年金と障害厚生年金は併給される。
なお労災保険の障害等級と、厚生年金保険および国民年金の障害等級は全く別の基準である。労災保険が第1級〜第14級まであるのに対し、厚生年金保険は1級〜3級、国民年金は1級〜2級となっている(”第”◯級という呼び名は労災保険に特有のものである)。
障害時の社会保険のまとめ
障害給付は請求しないともらえない
労災保険と厚生年金保険、国民年金の障害給付は給付要件や給付額、給付期間が異なり、一部の例外を除いて自ら請求しないと給付されない。しかし手続きをきちんと行うことで、3つの障害給付が併給され、老齢年金と障害年金のうち有利な方を選択することも可能である。
なお国民年金には20歳前傷病の障害年金制度がある。これは国民年金加入前の事故により障害状態となった場合、20歳以後から障害基礎年金を給付するものだが、保険未加入時の事故に対する救済のための保険制度の例外である(ゆえに国民年金”保険”とは呼ばない)。
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3つの障害年金には、障害者の配偶者や扶養家族がいた場合に、加算金がプラスされる制度がある。また障害等級が変わったり、新たな障害が発生した時の年金改定のルールも設けられている。制度の概要を知っておくだけでも、どのような給付が受けられるのか判断できるだろう。
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