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004(制度概要)_雇用政策

医療機関が人材派遣サービスを利用する際の法的義務と注意点

多職種連携を基本とする医療機関において、医療事務やリネンサプライなどの業務に人材派遣サービスや業務委託サービスを利用するケースが一般的です。本記事では人材派遣サービスにおいて派遣先たる医療機関が負う義務と注意事項などのポイントを解説します。

医療職の労働者派遣は禁止されている

医療専門職は派遣で就労できない

人材派遣サービス(以下「労働者派遣サービス」といいます)を利用している医療機関は少なくありませんが、実は医師や看護師、薬剤師、診療放射線技師などの医療専門職を、労働者派遣契約に基づき就労させることは、労働者派遣法により禁止されています。

その理由は営利性が強く、人材が流動的な労働者派遣事業を医療職にも適用すると、チーム医療の信頼関係の構築、医療事故時の責任所在の明確化、医療従事者の安定的な確保、非営利性および医療サービスの質の維持などが困難になると考えられているからです。

医療専門職の派遣就労禁止の例外

ただし、例外的に派遣が認められるケースもあります。これは「紹介予定派遣(直接雇用を前提とした6ヶ月以内の一時的な派遣)」「産育休や介護休業をしている職員の休業期間中の代替スタッフ」「医師不足が深刻なへき地での医師派遣」などが該当します。

一方で、受付やレセプト請求などの医事スタッフについては労働者派遣禁止規定の対象外であり、柔軟な活用が可能です。近年は「タスク・シフト/タスク・シェア」の一環として、医師の指示下でカルテ代行入力を行うメディカルアシスタントの需要も高まっています。

労働者派遣サービス利用時の基本ルール

派遣される労働者の指名選考禁止

紹介予定派遣を除く通常の労働者派遣において、事前に派遣労働者の履歴書を取得したり面接を行ったりして、派遣労働者を指名・選考する行為は禁止されています。

また自院を1年以内に退職した労働者を、派遣労働者として改めて自院で就労させることもできません(60歳以上の定年退職者を除く)。

同一の派遣労働者は3年間が上限

派遣労働者を受け入れる際は、原則として3年間が上限です。3年間の上限には、事業所(部署)単位で3年まで、個人単位で3年までの2つのルールがあります。

  • 事業所単位の制限:同一の事業所あるいは部署において、原則として3年を超えて派遣労働者を受け入れることはできません。3年を超える場合は、事業所の過半数労働組合等への意見聴取手続きが必要です(意見聴取すれば3年を超えて就労させられます)。
  • 個人単位の制限:同一の派遣労働者を、病院内の同一の部署(部・課)で3年を超えて受け入れることはできません。例えば同一の派遣労働者を同じ部署で無期雇用的に就労させることはできず、その者を直接雇用するか、新たな派遣労働者の受け入れが必要です。

3年間の上限に達する日を抵触日といい、派遣先(医療機関)は、派遣元(人材派遣会社)と労働者派遣契約を締結する際、あらかじめ派遣元に対し、事業所単位の抵触日を通知する義務があります。派遣労働は雇用身分が不安定なので、常態化させないためのルールです。

勤怠管理の責任は派遣先が負う

派遣労働者は派遣元(人材派遣会社)に雇用されており、派遣労働者の労働契約や給与支払いなどは派遣元が責任を負います。しかし職場では派遣先の指揮命令に基づき就労するため、次の事項については派遣先を派遣労働者の雇い主とみなし、派遣先が責任を負います。

  • 労働時間管理:日々の勤務時間と休憩および休日の管理は派遣先が行います。時間外労働や法定休日労働を行わせる場合は、派遣元において36協定が締結・届出されていることが前提となりますので、派遣契約の締結時に要確認です。
  • 労働安全衛生:作業内容を変更した際の安全衛生教育は、派遣先が実施義務を負います。一般健康診断の実施は派遣元の義務ですが、医療従事者の労働者派遣禁止の例外において、電離放射線業務にかかる特殊健康診断は派遣先が実施します。
  • ハラスメント対策:パワーハラスメントやセクシャルハラスメントの防止措置は派遣労働者に対しても講じる義務があります。また食堂や休憩室、更衣室は、自院の従業員と同様に派遣労働者にも利用させなければなりません。

派遣先責任者の選任(5人超)

同一の事業所において「就労させている派遣労働者数」+「自院の労働者(直接雇用)数」が5人を超える場合は、派遣先事業者は派遣先責任者を選任する義務があります。なお派遣先責任者は事業所ごとの派遣労働者の人数100人につき1名を選任します。

派遣先責任者の選任義務がある場合、派遣労働者ごとに、就業日、始業・終業時刻、従事した業務内容などを記載した派遣先管理台帳を作成し、3年間保存しなければなりません。また、これらの就業実績を月に1回以上、派遣元へ書面等で通知する義務も生じます。

派遣労働者の労働条件の決定方法は2つ

基本は同一労働同一賃金の法理

労働者派遣法において、派遣労働者の「同一労働同一賃金」を担保し、派遣先の従業員との不合理な待遇格差を解消するために、派遣元(派遣会社)には2つの決定方式のいずれかを採用することが義務付けられており、派遣先にも情報提供などの協力義務があります。

同一労働同一賃金法理とは?

正規雇用者と非正規雇用者(派遣労働者・契約社員・パートタイマー等)が同一の労働に従事する場合、雇用身分を理由として賃金において不合理な差別を設けてはならないとする法律上のルールであり、同一労働同一賃金法理に反する給与条件は無効とみなされます。

①派遣先均等・均衡方式(原則)

派遣先の正社員等の待遇と同等以上にする方式です。派遣先は比較対象となる労働者の待遇情報を派遣元に提供する必要があります。しかし、この方式は派遣先が変わるたびに賃金水準が変動するため、実務上はあまり一般的ではありません。

②労使協定方式(一般的な方法)

派遣元が労働者の過半数を代表する者等と労使協定を結び、厚生労働省が定める「同種業務の平均賃金(一般賃金)」以上を支給する方式で、次の6要件をクリアすることが必須です。賃金水準の安定性が高いため、多くの派遣会社がこちらを採用しています。

  • 同等以上の賃金水準:厚生労働省が毎年公表する「同種業務の一般の労働者の平均賃金(一般賃金)」と同等以上の額となる賃金を定めること。
  • 職務能力等の向上:派遣労働者の職責・職務能力・経験等の向上に応じて、賃金が改善される仕組みを盛り込むこと。
  • 職務内容等の適正評価:職務内容、成果、能力、経験等を適正に評価して賃金を決定すること。
  • 賃金以外の待遇:通勤手当(実費支給等)や基本給以外の諸手当、慶弔休暇などの待遇について、派遣元の自社労働者との間で不合理な差を設けないこと。
  • 教育訓練の実施:派遣労働者に対し、段階的・体系的な教育訓練を実施することを明記すること。
  • 有効期間:労使協定の有効期間(原則2年以内が推奨される)を定めること。

労働者派遣と業務請負はどう違うか?

医療事務を労働者派遣サービスあるいは業務請負サービスにより運営している医療機関は少なくありませんが、これらのサービスを利用する場合に、人材派遣契約と業務請負契約の違いをきちんと認識しておかないと、思わぬトラブルが生じることがあるのでご注意下さい。

労働者派遣と業務請負の主な相違

労働者派遣:派遣スタッフに指示命令するのは派遣先の院長や事務長です。勤怠管理や安全教育等も派遣先の責任であり、「自院のスタッフが足りないから、指示通りに動いてくれる人を労働者派遣サービスを利用して補充する。」イメージです。

業務請負:業務請負業者が委託先に代わって医療事務部門を運営します。委託先たる医療機関側には、医療事務スタッフに対する指示命令権はありません。医事課機能を丸ごと専門業者に外注するため、院内に取引先が常駐しているイメージです。

知識不足が招く偽装請負のリスク

前述の事例のように医療事務を業務委託している場合に、委託先たる医療機関の院長や事務長、看護部長等が、業務委託事業者のスタッフに対して直接指示や命令をすることは、偽装請負とみなされ、労働者派遣法および職業安定法違反で処罰されるリスクがあります。

業務請負サービスの実施においては、業務の遂行方法、労働時間の管理、服務規律の決定、スタッフの指導教育などは全て業務請負サービス事業者において行います。これらについて委託先たる医療機関側が、業務請負スタッフに対して直接干渉することは法令違反です。

したがって、業務請負サービスを利用する際は、委託者たる医療機関側において、あらかじめ自院と業務委託サービスとの業務分掌を明確にし、業務改善を要する場合には、業務委託サービス事業者側の管理責任者を通じて申し入れる等を周知徹底しなければなりません。

医療専門職の労働者派遣が原則として禁止される一方で、医事課要員などを人材派遣サービスで賄っている医療機関は少なくありません。また医事のみならずリネンサプライや院内給食を業務委託する事例は珍しくありませんが、偽装請負にはくれぐれもご注意ください。


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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/人事コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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