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001_労働契約のFAQ

【手当廃止】精勤手当を廃止し時給に上乗せ。規程変更・同意書・届出の実務ポイント

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

首をかしげる医師

当クリニックではこの度、勤務体制の柔軟化と賃金体系のシンプルな運用を目指し、非常勤スタッフ(パートの歯科衛生士や歯科助手)に支給していた「精勤手当」を廃止し、時給に上乗せ(転嫁)する形で給与制度を変更する予定です。

つきましては、実務上の手続きについて以下の3点をご教示いただけますでしょうか。

  1. 賃金規程の改定方法について
    賃金規程から精勤手当の条項を削除するだけで問題ないでしょうか。それとも廃止した精勤手当に相当する額(改定前過去3年間に支給された精勤手当の1時間あたりの平均額)を、時給へ上乗することについて、念の為に規程の附則に明記すべきでしょうか。
  2. 従業員からの同意書について
    スタッフには事前に説明書を配布し、算出方法や個別の具体的な上乗せ額を説明した上で、説明を受けた旨のサインをもらっています。今後、正式に「同意書」を取得する予定ですが、同意書内にも具体的な算出式や実際の金額を再度記載した方がよいでしょうか。
  3. 労働基準監督署への届出資料について
    今回の賃金規程の変更を届け出るにあたり、所轄の労働基準監督署へは賃金規程のみの提出で支障ないでしょうか。併せて持参・提出すべき資料等があれば教えてください。

ご相談への回答

デキる男性ビジネスマン

歯科クリニックにおいて、欠勤を防ぐ目的で設けられていた精勤手当を廃止し、基本給(時給)へ組み込む見直しは、スタッフの体調不良時の無理な出勤を防ぎ、有給休暇を取得しやすい環境を整える上で非常に意義のある改善です。

ご質問いただいた3点の実務対応について、順を追って解説いたします。

賃金規程の改定と「附則(経過措置)」の記載

結論から申し上げると、単に精勤手当の条項を削除するだけでは、既存の非常勤スタッフの時給決定根拠や計算方法が不透明になってしまいます。手当の廃止は労働条件の不利益変更に該当し、合理的な事由や廃止に伴う代償措置が無い場合、無効とされることもあります。

もし精勤手当を時給に転嫁する旨を労働契約書や賃金表に明記していなければ、今回の制度改定に伴う過渡的な措置(激変緩和措置および不利益変更の回避措置)を講じたことを明確にするため、賃金規程の「附則」に措置条文を設けておくことが望ましい対応です。

具体的な条文イメージとしては、以下のような規定を設けます。

(精勤手当廃止に伴う時給の改定措置)

第〇条(本規程改定日)において在籍する非常勤職員については、精勤手当の廃止に伴い、改定前過去3年間に支給された精勤手当の1時間あたりの平均額を、個別の基本時給に上乗せして決定する。

このように明記しておくことで、労働条件の不利益変更に対して代償措置を講じた事実が客観的に証明され、予期せぬ労使間のトラブルを防ぐことができます。

同意書と説明書の一体化によるトラブル防止

説明書に個別の上乗せ額を明示して受領サインを得ている点は、非常に丁寧なプロセスを踏まれています。その上で取得する「同意書」についてですが、同意書自体に具体的な金額を再掲しなくても、直ちに法的な無効となるわけではありません。

しかし、労働条件の不利益変更(手当廃止と基本給化)においては、後日スタッフから「自由な意思に基づく同意ではなかった」「具体的な金額や影響をよく理解していなかった」と主張され、トラブルに発展するリスクを排除することが不可欠です。

そのため、実務上は「〇年〇月〇日付け説明書(個別上乗せ額:時給〇〇円加算)を受領・理解した上で、賃金制度の変更に同意します」といった一文を同意書内に明記し、事前配布した説明書と一体不可分なものとして運用することをおすすめします。

労働基準監督署への届出書類

就業規則や賃金規程の変更届出先は、貴院の所在地を管轄する「労働基準監督署」となります(※届出義務があるのは、常時10人以上の労働者を使用する事業場です)。

労働基準監督署へ提出・持参する基本書類は以下の3点です。

  1. 就業規則(変更)届(※厚生労働省様式)
  2. 変更後の賃金規程(変更前後の違いがひと目でわかる「新旧対照表」を添付することを推奨します)
  3. 労働者の過半数代表者の意見書(投票あるいは互選等の民主的な手続きにより選出された代表者です※院長による指名はNG)

なお、同意書や個別の説明書は労基署への提出義務はありませんが、院内の重要書類として大切に保管しておいてください。

本件のポイント

気づきを得た白衣の男性
  • 単なる条項削除ではなく附則へ明記: 精勤手当の廃止と時給上乗せの経緯・計算ルールを賃金規程の附則に経過措置として残す。
  • 同意書と説明書を紐付ける: 同意書内に「個別説明書の内容を受領・理解した旨」を記載し、自由な意思に基づく同意であることを証拠化する。
  • 労働基準監督署への提出書類を整理: 届出先は労働基準監督署。変更届・新規程(新旧対照表含む)・過半数代表者の意見書の3点セットを準備する。
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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/人事コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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