人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。
依頼者からのご相談

当院は歯科医師2名、歯科衛生士・助手6名が勤務する歯科クリニックです。当院の非常勤スタッフは全員が1日8時間未満の短時間勤務であり、1年ごとの有期雇用契約を結んでいます。
この度、私傷病による休職規定を新たに整備するにあたり、「パートスタッフでも無期雇用の場合は正社員と同等の病気休職を認める必要があり、有期雇用の場合は契約期間の終期を踏まえて認める」という指針を知りました。当院の非常勤スタッフは勤続5年以上の者も多く、実質的に無期雇用と変わらない働き方です。
例えば、6月から病欠となり30日間の欠勤を経て7月から120日間の休職に入る場合、契約満了日である翌年3月末より前の10月末に休職期間が満了します。復職できない場合はその時点で自動退職となりますが、有期雇用の契約満了日を待たずに退職となるルールを適用しても法的に問題ないでしょうか?
ご相談への回答

結論から申し上げますと、無期雇用と同等とみなされる有期雇用スタッフに対して、就業規則に基づく休職期間満了による自然退職(自動退職)を適用することは法的にまったく問題ありません。 労働契約の期日(3月末)が到来していなくても、規定の休職期間が満了した時点で復職要件を満たしていなければ、その日をもって雇用関係は終了します。
同一労働同一賃金ガイドラインの判断基準
パート・有期雇用労働法第8条(同一労働同一賃金)のガイドラインにおいて、無期雇用の短時間労働者には正社員と同一の病気休職期間を認めることが求められています。一方、有期雇用労働者については、原則として雇用契約期間の範囲内で休職を認めるという区別が合理性とされています。
しかし、貴院のように契約更新が何年も反復されて実質的に無期雇用と同視できる場合や、更新への合理的期待が存在する場合は、雇止めが解雇と同一の法的制限を受ける(労働契約法19条)ため、休職制度においても無期雇用に準じた期間を設定する必要があります。休職制度の本質は「私傷病療養のための雇用維持(免責措置)」であり、療養に必要な期間は1日の所定労働時間の長さによって変わるものではないため、短時間であることを理由に差を設けることも不合理と判断されます。
休職期間満了と契約満了日の関係性(早い方を適用)
ここでご質問の「契約満了日(3月末)より前に休職期間が満了した場合(12月末)の取扱い」についてですが、休職制度は私傷病で労働提供ができないスタッフに対する恩恵的な措置です。
復職できない状態にあるスタッフに対し、クリニック側が契約満了日まで雇用を維持し続けなければならない法的義務はありません。したがって、以下のルールのうち「いずれか早く到来する日」をもって雇用が終了することになります。
- 就業規則に定める病気休職期間が満了した日(例:10月末)
- 有期労働契約の満了日(例:3月末)
仮に7月に休職に入り、休職上限が120日であれば、10月末の満了時点で復職不可であれば自動退職となります。逆に、契約満了が9月末であれば、休職期間中であっても契約満了日(または合理的な雇止め)によって雇用が終了します。この運用は無期雇用スタッフとの比較においても不合理な差とはならず、適法な労務管理となります。
本件のポイント

- 有期雇用労働者であっても、契約が反復更新され実質的に無期雇用と同視できる場合は、無期雇用に準じた病気休職期間を設定する。
- 病気休職は私傷病で働けない労働者の雇用を維持する恩恵的制度であり、復職できない場合に契約満了日まで雇用を維持する義務はない。
- 有期雇用スタッフの休職終了タイミングは、「就業規則上の休職期間満了日」と「労働契約の満了日」のいずれか早い方が適用される。
- 休職開始の手続き、定期的な病状報告の義務付け、復職可否の判断基準(主治医意見書および面談)を就業規則・休職規程に明記しておく。
本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


