人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。
依頼者からのご相談

当院は外来専門の歯科クリニックです。当院の1日の所定労働時間は7.5時間と定めておりますが、診察が多い日などは診療後の後片付けなどで、歯科衛生士や歯科助手、事務員等の残業が発生することが珍しくありません。
ところで当院では30分未満の軽微な居残りを残業とみなさず、切り捨てるルールとなっています。それについて当院のスタッフから「30分未満の残業であっても月単位では相当な額の残業代になるので、30分未満を切り捨てるのはおかしいのでは?」と意見されました。
しかし私(院長・歯科医師)が開業前にある病院で勤務医として働いていた時は、30分未満の居残りは残業として認めないルールが普通でした。これは看護部も事務部も同様だったので当たり前と思っていたのですが、当院の運用は法的に問題があるでしょうか?
ご相談への回答

賃金は1分単位で支払う
結論から申し上げると、30分未満の残業をカットしている貴院の運用は、労働基準法第24条(賃金全額払いの原則)および第37条(時間外割増し)に違反します。労働基準法は、1分単位の労働時間に対して賃金を計算し、支払うように事業主に義務付けています。
例外は厚生労働省の通達(昭和63年3月14日基発第150号)により認められている次の端数処理に限られます。
1ヶ月における時間外労働等の合計時間 に1時間未満の端数がある場合
- 30分未満:切り捨て
- 30分以上:1時間に切り上げ
したがって、日ごとの残業時間に対して「30分未満切り捨て」や「四捨五入」を行うことは認められておらず、賃金の不当な切り捨て(未払い残業代) と判断されます。
その他の端数処理(例外処理)
なお、労働時間の集計ではなく、賃金計算の過程で発生する端数については、以下のような簡便な処理が認められています。
- 1時間あたりの賃金単価や割増賃金額の計算において1円未満の端数が生じた場合:50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる処理
- 1ヶ月の賃金支払額の総額に100円未満の端数がある場合:50円未満を切り捨て、50円以上を100円に切り上げて支払う処理(就業規則への記載が必要)
- 1ヶ月の賃金支払額の総額における1,000円未満の端数:翌月の支払日に繰り越して支払う処理
本件のポイント

- 日ごとの労働時間や残業時間は、原則として1分単位で集計・計算しなければならず、日単位での30分未満切り捨てや四捨五入は労働基準法違反となる。
- 法令で認められている残業時間の端数処理は「1ヶ月間の時間外・休日・深夜労働の合計時間」に対する「30分未満切り捨て・30分以上1時間切り上げ」のみである。
- 端数処理の誤りによって過去に未払いとなった残業代が存在する場合は、正しく再計算を行って対象スタッフへ遡及支払いの対応を行わねばならない。
本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


