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005(制度概要)_給与計算

給与担当者に朗報!最新(令和8年度)法令に基づく年末調整ガイド

年末調整とはなにか?

所得税を課税する仕組み

所得税は、個人の1年間(毎年1月1日~12月31日迄)の所得に対して課される国税です。経済活動による収入から、その収入を得るために要した必要経費(給与所得者の場合は「給与所得控除」)を差し引いた「所得」に対して課税されます。

年税額と概算額を精算する

給与所得者は、会社が毎月の給与から「源泉徴収制度」に基づいてあらかじめ概算の所得税を天引きして国に納付しているため、原則として個人での確定申告は不要です。しかし、毎月徴収される税額はあくまで概算であり、実際の年税額とは一致しません。

そこで、12月末時点の扶養家族の状況や、1年間に支払った生命保険料・地震保険料などを確認し、正しい各種控除額を給与総額から差し引いて課税所得と年税額を算出します。この確定した「年税額」と、1年間に源泉徴収した「概算の税額合計」との差額を精算する作業を「年末調整」と呼びます。

なお、副業や兼業等で複数の会社から給与を得ている場合や、医療費控除、雑損控除、初年度の住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用を受ける場合は、個人で確定申告を行う必要があります。

年末調整の対象者

年末調整の対象とならない人

原則として勤務先に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している従業員が年末調整の対象となりますが、以下に該当する人は除外されます。

  1. 本年中における主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人
  2. 「給与所得者の扶養控除等申告書」を勤務先に提出していない人(乙欄適用者)
  3. 災害被害者に対する租税の減免等により、源泉所得税の徴収猶予や還付を受けた人
  4. 2カ所以上から給与の支払いを受けており、他社に扶養控除等申告書を提出している人
  5. 年の中途で退職した人で、死亡退職や一定の要件(パートタイマー等で本年中の給与総額が136万円以下など)に該当しない人

複数の勤務先で複業・兼業している場合でも、扶養控除申告書を提出できる勤務先はひとりの給与所得者につきひとつの勤務先だけです。

年度の途中で転職した場合

年の中途で転職し、12月時点で自社に在職している従業員については、前職で同年の1月〜12月までに支払われた給与額や社会保険料、源泉徴収税額を含めて年末調整を行います。そのため、対象の従業員から前職の「給与所得の源泉徴収票」を取得する必要があります。

年末調整事務の流れ

事前準備(申告書の取得)

社内の対象者を抽出し、従業員へ各種申告書を配布・回収します。必要な申告書は以下のとおりです。

  • 令和8年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
  • 令和8年分給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書(兼用様式)
  • 令和8年分給与所得者の保険料控除申告書
  • 令和8年分給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書(適用2年目以降の者のみ。税務署等から交付されたもの)

事務効率化のため、国税庁が無償提供している「年調ソフト」などを用いた年末調整手続きの電子化(申告書データの電磁的方法による回収)の導入が推奨されています。

課税所得の計算と各種控除

総支給額(額面収入)から、以下の控除を順次差し引いて「課税所得」を算出します。

  • 給与所得控除:給与所得者の必要経費に相当します。令和8年分より最低保障額が74万円に引き上げられました。
  • 基礎控除:納税者本人の合計所得金額が2,500万円以下の場合に適用。合計所得金額が489万円以下の場合は104万円、2,350万円以下の場合は62万円など、所得段階に応じて段階的に設定されています。
  • 配偶者控除・配偶者特別控除:本人の合計所得金額が1,000万円以下の場合に適用。配偶者の合計所得金額が62万円以下(給与のみの場合、収入136万円以下)であれば配偶者控除(最高38万円)、62万円超133万円以下(給与のみの場合、収入136万円超207万円以下)であれば配偶者特別控除(最高38万円)を適用します。
  • 扶養控除:生計を一にする16歳以上の扶養親族(合計所得金額62万円以下)がいる場合に適用。一般の扶養親族は38万円、特定扶養親族(19歳以上23歳未満)は63万円、老人扶養親族(70歳以上)は48万円(同居老親等は58万円)が控除されます。
  • 特定親族特別控除:年齢19歳以上23歳未満の特定親族(合計所得金額が62万円超123万円以下)がいる場合に、その所得金額に応じて最高63万円を控除できます。
  • 生命保険料控除:一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料が対象(最高12万円制限)。
  • 地震保険料控除:支払った地震保険料や旧長期損害保険料に応じて最高5万円を控除。
  • 社会保険料控除・小規模企業共済等掛金控除:給与天引き以外の国民年金、iDeCo等の個人負担支払分も証明書類に基づき全額控除。
  • 所得金額調整控除:給与収入が850万円を超える人で、23歳未満の扶養親族や特別障害者である同一生計配偶者・扶養親族等を有する場合に適用(最高15万円)。
  • 障害者控除・寡婦控除・ひとり親控除・勤労学生控除:特定の要件を満たす場合に適用。ひとり親控除(合計所得500万円以下、生計一の子の所得62万円以下等)は35万円、寡婦控除(合計所得500万円以下等)は27万円、勤労学生控除(合計所得89万円以下等)は27万円が控除されます。

【生命保険料控除:令和8年の特例】年齢23歳未満の扶養親族を有する場合、一般の新生命保険料に係る控除限度額が最高4万円から最高6万円に引き上げられ、計算式も緩和されます。

年税額の確定と概算額の精算

  1. 算出された課税所得(1,000円未満切り捨て)に、算出所得税額の速算表に定められた税率を適用して「算出所得税額」を求めます。
  2. 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の適用を受ける場合は、算出所得税額から直接該当額を差し引いて「年調所得税額」を算出します。※令和8年分について、令和4年以降居住開始者で合計所得金額が2,000万円を超える人は住宅ローン控除を受けられません。
  3. 年調所得税額に102.1%を乗じ(復興特別所得税2.1%分を含む)、100円未満を切り捨てて最終的な「年調年税額」を決定します。
  4. 年調年税額と毎月の源泉徴収税額の合計額を比較します。
    • 源泉徴収税額>年税額の場合:差額(過納額)を本人に還付します。
    • 源泉徴収税額<年税額の場合:差額(不足額)を本人から追加徴収(追納)します。精算手続きは通常12月支給の給与や賞与のタイミングで行われます。

法定調書・給与支払報告書の提出

年末調整完了後、会社は関係行政機関へ提出する法定書類を翌年1月末日までに提出します。

  • 税務署へ提出:給与所得の源泉徴収票、法定調書合計表など
  • 市区町村へ提出:給与支払報告書

市区町村に提出した給与支払報告書をもとに、翌年6月以降の従業員の個人住民税の額が決定されます。

令和8年度年末調整:主な改正点

  • 所得税の基礎控除の引上げ:合計所得金額2,500万円以下の納税者について、合計所得金額に応じた基礎控除額が引き上げられました(例:所得489万円以下の場合は現行の48万円から104万円に引上げ)。
  • 給与所得控除の最低保障額の引上げ:給与所得控除の最低保障額が65万円から74万円に引き上げられました。
  • 各種扶養親族等の所得要件の改正:基礎控除や給与所得控除の引上げに伴い、扶養親族や同一生計配偶者、ひとり親の生計を一にする子の所得要件が「58万円以下」から「62万円以下」(給与収入のみの場合は136万円以下)に緩和されました。また、特定親族や配偶者特別控除、勤労学生等の所得要件も同様に引き上げられています。
  • 年齢23歳未満の扶養親族を有する場合の生命保険料控除の特例創設:23歳未満の扶養親族がいる場合、一般の新生命保険料控除の適用限度額が最高4万円から最高6万円に引き上げられます(新旧両方を支払う場合の適用限度額も6万円)。
  • 翌年(令和9年分)以降の税制改正(参考):令和9年1月1日以降、「防衛特別所得税(所得税額の1%)」が創設され、同時に「復興特別所得税」の税率が2.1%から1.1%に引き下げられます(合計の付加税率は2.1%で変更ありません)。

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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/人事コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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