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005(制度概要)_給与計算

給与担当者必見!給与計算マイスターが実務のポイントを徹底解説

前回は給与明細の各項目を読み解くことで、給与計算や給与計算時に注意すべきルールなどを理解しました。本記事では給与明細の各項目を時系列にまとめ、給与計算の全体的な流れおよび各プロセスにおいて処理すべき内容について説明します。

給与計算の大まかな流れ

給与計算の目的

給与計算とは、支給すべき額を集計し、控除すべき額を差し引き、残りの手取り額を給与支給日までに労働者の指定する金融機関の口座に振り込み、給与支給日に給与明細書を交付する一連の作業をいいます。なお現金支給が原則ですが、ここでは銀行振込を前提に解説します。

賞与計算においても基本的に給与計算と同じ流れであり、支給額や法定控除額の計算方法が給与計算とは若干異なります(賞与計算については別の記事で詳述します)。また、給与計算後は賃金台帳と源泉徴収簿を調製し、労働保険料の確定申告や年末調整に備えておきます。

給与計算の進め方

給与計算の基本的なステップは、固定的賃金の更新→変動的賃金の集計→法定控除の更新→法定外控除の集計→差引支給額の振込→給与明細書の作成と配布となります。注目すべきは、固定的賃金と法定控除は毎月定額なため、異動があればマスタデータを更新することです。

一方の変動的賃金は、月ごとに支給額あるいは控除額が変動するため、その都度集計を行う必要があります。法定外控除についても、財形貯蓄や企業型確定拠出年金のマッチング掛金であれば定額ですが、社内販売や自家診療の代金を控除する場合は集計が必要です。

給与計算その1(支給額の計算)

給与計算の大前提

給与計算の基本は、基本給や諸手当の支給要件および計算根拠に一貫した合理性があり、なおかつ給与計算ソフトに入力する支給額等の元データが公文書として調製されていること、またこれらの元データを経営者が容易に確認(監査)できることです。

基本給の決定方法や手当の支給要件が不明瞭であったり、これらの計算プロセスが給与担当者しかわからなかったり、業務監査の際に給与計算ソフトに入力されている数値データの根拠資料が存在しない、などといった杜撰な運用は絶対に避けるべきです。

固定的賃金データの更新

固定的賃金は、人事異動や定期昇給あるいは身上変更等が発生しない限り、毎月定額が支払われることが一般的です。昇任や昇格があった場合は給与辞令を給与計算担当者に共有し、また指定した期日までに身上変更届の提出が行われるようルール化する必要があります。

  • 基本給:等級号俸表に基づき決定します。定期昇給や昇任・昇格により等級号俸の変更があった場合に交付される給与辞令を参照し、給与計算ソフトの基本給マスタを変更します。
  • 役職手当:昇任により役職に登用されたり、あるいは役職が変わったりした場合に、役職手当の額を変更します。異動辞令とセットで作成される給与辞令の役職手当欄を確認します。
  • 家族手当:扶養家族がいる従業員に対して支給しますが、家族が扶養から外れた場合は家族手当の支給を打ち切ります。身上変更届により支給・不支給を判断します。
  • 住宅手当:賃貸住宅の家賃補助が目的ですが、マイホーム所有者に対しても住宅手当を支給するケースがあります。転居に伴い住宅手当が変更になる場合は、身上変更届を提出させます。
  • 通勤手当:通勤に要する費用を勤務先が支弁するための手当です。業務移動の旅費交通費とは異なります。通勤手当は通勤手段および距離により変動するため、身上変更届を提出させます。

変動的賃金の集計・計算

変動的賃金は、勤務の実績に応じて月々の支給額が変動するものです。変動的賃金の代表格といえば時間外手当ですが、労働基準法では法定労働時間を超える勤務、法定休日の勤務、深夜時間帯の勤務について、法定の率以上の割増賃金の支払いを義務付けています。

  • 時間外手当:所定労働時間を超える勤務に対して支給します。いわゆる残業手当と呼ばれているものです。法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超える勤務部分は、通常の賃金の25%以上の額を割増分として上乗せしなければなりません(月60時間超の時間外はさらに25%増し=50%割増)。当月の勤怠データの集計を元に支給額を計算します。
  • 休日勤務手当:公休日の勤務に対して支給します。法定休日は労働基準法に基づき通常の賃金の35%以上の法定休日割増を支払います。法定休日以外の休日は時間外労働として処理し、当該週の労働時間がすでに法定労働時間(40時間)を超えていれば、25%以上の時間外割増が必要となります。
  • 深夜勤務手当:労働基準法に定める深夜時間帯(22時~翌5時)の勤務に対し、通常の賃金の25%以上の深夜勤務割増を行います。なお、労働基準法において時間外割増および法定休日割増の対象外とされる管理監督者についても、深夜勤務割増は必要となります。

労働基準法では、賃金は1分単位で計算して支払うこととされていますが、時間外労働、休日労働、深夜労働のそれぞれの月の合計時間に1時間未満の端数がある場合は、30分未満切り捨て、30分以上切り上げの処理が認められています。

給与計算その2(控除額の計算)

法定控除データの更新

法定控除も固定的賃金と同様に、社会保険料等の改定が無い限り、月々の控除額は一定です。したがって各種法定控除の改定のタイミングで給与計算ソフトの法定控除マスターデータを更新することになります。

  • 社会保険料:健康保険料、介護保険料、子ども・子育て支援金、厚生年金保険料が該当し、前の3つは健康保険の標準報酬月額、最後の1つは厚生年金保険の標準報酬月額に所定の率を乗じて得た額を、労使折半でそれぞれ負担します。会社負担分は当月の法定福利費に計上し、被保険者負担分は翌月の給与から控除します。給与控除した月の末日までに、会社負担分を合算して日本年金機構に納付します。定時改定は毎年9月(控除は10月)ですが随時改定等にご注意ください。
  • 雇用保険料:当月の総支給額(賃金以外の支給額を除く)に対し、法定の雇用保険料率のうち、被保険者負担分に相当する率を乗じて得た額を、当月の給与から控除します。社会保険との大きな違いは、月々の給与から控除する雇用保険料は概算額であり、労働保険年度(4月~翌年3月)に支払った賃金総額に対し、労災保険料率(全額会社負担)と雇用保険料率(保険本体部分を労使折半、二事業分は全額会社負担)を乗じて得た額を、7月10日までに一括納付することです。
  • 源泉所得税:当月の課税支給額に対し、法定の源泉徴収税額表に基づき計算した額を当月の給与から控除し、翌月10日までに所轄の税務署に納付します。月々の給与から控除する源泉所得税も概算額であり、年末調整の時に1年間(1月~12月)の年税額を確定させ、これまでに徴収した概算額との精算を行います。なお、年間の給与収入が2千万円を超える場合は、年末調整ではなく自身で確定申告を行います(扶養控除申告書を職場に提出していない者も同様です)。
  • 個人住民税:所得税は国税ですが、個人住民税は地方税であり、従業員の居住地を管轄する市町村役場から職場宛に送付された住民税決定通知に基づき、6月~翌年5月までの期間において、各月の個人住民税の額を当該月の給与から控除し、翌月10日までに各自治体に納付します。端数調整は改定の初月(6月)で行われることにご留意願います。なお、1月~4月の間に退職する従業員については、5月分までの未徴収の個人住民税を一括徴収して納付しなければなりません。

法定外控除

例えば勤労者財形貯蓄の積立金や企業型確定拠出年金のマッチング拠出の掛金、あるいは団体保険(生保・損保)など、法定控除以外の金員を控除します。

注意すべきは、本来は法定控除以外の賃金控除は全額払いの原則違反として認められていないということです。したがって法定外控除を行うには、従業員の過半数を代表する者との間で、賃金控除に関する労使協定の締結(届出不要)が必須となります。

論点整理:支給と控除のタイムラグ

月給制の場合、月末〆切・当月25日支給が一般的です。しかし時間外手当や遅刻早退の欠勤控除などは月の末日にならないと実績が確定しないため、翌月の給与で精算することが認められています。また社会保険料は月の末日時点の被保険者資格に基づき当月の保険料が発生するため、被保険者負担分は翌月の給与から控除することになっています。

給与計算その3(手取額の振込)

給与資金の送金・振込

支給額と控除額が確定したら、これらの差額(=手取り額)を給与支給日までに従業員が指定する金融機関の口座に振り込みます。最近はインターネットバンキングが主流であり、給与支給日の前日までに送金予約をすることができます。なお金融機関ごとに給与資金が不足していないか事前にご確認ください。

歯科クリニックなどの小規模な事業所では経営者が自ら給与計算および給与振込を行うケースが多いですが、大きな組織では内部統制の一環として人事部が給与計算を行い、経理部が振込を担当するなど、特定部門に権限を集中させず、複数部門が分業して互いの仕事をチェックする体制とするのが一般的です。

給与明細書と賃金台帳

最後に給与明細書を作成して給料日までに従業員に交付し、賃金台帳および源泉徴収簿を調製して法定の保存年数保管します。給与明細書と源泉徴収簿は所得税法に、また賃金台帳は労働基準法において事業者に作成および保管等が義務付けられています(源泉徴収簿=7年間、賃金台帳=原則5年間/当面3年間)。

源泉徴収簿は年税額の根拠として調製するため、支給と控除の内訳を明記しますが、賃金台帳は労働法令のチェックと労働保険の算定根拠のために調製するので、労働時間や年次有給休暇に関する記載も必要となります。また給与明細は両方の要素を反映させた内容となっていることが多いです。

筆者にとって人事部での初仕事が給与計算でした。給与計算業務を通じて、労働時間管理や社会保険手続きなど人事管理のエッセンスを学び、その後いくつかの組織にて、属人化(ブラックボックス化)して機能不全に陥っていた給与計算事務の再建を担当することになります。

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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/人事コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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