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02_労働安全衛生

労災保険の併給調整

2024年9月19日

労災保険の給付調整アイキャッチ

医療保険との調整

健康保険

労災事故に起因する傷病の療養や休業補償は労災保険から行われ、私傷病については健康保険から行われる。経営者は労災保険が適用されないが、従業員5人未満の小規模事業の経営者であれば、健康保険から保険給付が行われることがある。

国民健康保険

個人事業主は(第2種特別加入者を除き)労災保険の適用外であり、さらに健康保険の被保険者にもなれないため、国民健康保険に加入することになるが、国民健康保険は、労災か私傷病かを問わず、全て保険給付を行うことになっている。

年金制度との調整

厚生年金保険

厚生年金保険にも障害厚生年金遺族厚生年金があり、これらは労災保険と違って、労災か私傷病かを問わずに給付される。ただし厚生年金保険と労災保険が同時に給付される場合は、厚生年金保険が優先され、労災保険は一部が減額調整される。

国民年金

国民年金にも障害基礎年金遺族基礎年金があり、こちらも労災か私傷病かを問わずに給付され、労災保険と併給される場合は、労災保険の一部が減額調整される。なお厚生年金保険と国民年金の障害年金・遺族年金は、一定の受給要件を満たさないと給付されない。

損害賠償との調整

労働基準法と労災保険

労働基準法によると、業務災害の補償義務は事業主にある。ただし事業主の資力不足によって補償が履行されないことが無いよう、労災保険が補償を代行することになっており、労災保険から補償が行われた場合は、事業主は(前払一時金の限度で)補償義務を免除される。

事業主による損害賠償

事業主が被災労働者に対して民事上の損害賠償を行った場合、逸失利益や療養費、葬祭費用、介護費用部分については賠償額に応じて労災保険を減額調整するが、和解金や示談金、見舞金の支払い分については、労災保険の減額調整は行わないこととされている。

自賠責保険

労使以外の第三者の行為によって発生した労災事故を、第三者行為災害という。例えば通勤途中に労働者が第三者の運転するクルマにはねられた場合などが該当するが、この場合は、まず自賠責保険から補償が行われ、不足部分について労災保険がカバーする。

労災保険の併給調整まとめ

社会保険はダブル受給できる

休業給付、障害給付、遺族給付など、複数の社会保険をダブル受給できるケースが多い。なお本記事では詳述しなかったが、労災保険の休業(補償)給付が行われる場合は、健康保険の傷病手当金は支給停止されるので、注意が必要である。

おすすめの書籍

労災認定と災害補償義務について、民事訴訟や損害賠償などの判例などを踏まえた専門書。いわゆる社会保険事務の範疇から、労使紛争など経営法務の領域に踏み込んだ、人事部門の実務家向けの、やや難しい内容となっている。


  • この記事を書いた人

山口光博

コンビニやスーパーの販売職を経て三十路を機に人事業界に転身。20年以上にわたり人事部門で勤務先の人事制度改革に携わった後に起業。社会保険労務士試験合格。日商販売士1級、建設業経理士1級、FP技能士2級など多数取得。

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