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10_退職時の制度

従業員が退職するときの手続き

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この記事では、従業員が退職するときに人事・労務の担当者が行う手続きについて説明します。

従業員が退職するときの主な手続き

従業員が退職するときに会社の人事労務担当者が行う主な手続きは、大きく分けて以下の9つです。

  • 退職願の受理
  • 退職手続きの説明
  • 人事給与システムなどの退職処理
  • 退職時の給与計算
  • 社会保険の被保険者資格喪失手続き
  • 雇用保険の被保険者資格喪失手続き
  • 住民税の給与所得者異動届出書の提出
  • 退職金の支給手続き
  • その他の手続き

以下、それぞれの詳細について説明します。

退職願の受理

従業員から退職の申し出があった際は、書面による退職願の提出を依頼することが一般的です。

口頭での意思表示も法的には有効ですが、書面に残すことで、両者の意思表示が明確になり、後のトラブルを防ぐことができます。

退職手続きの説明

退職に伴う各種手続きや注意点について、従業員に説明します。

説明事項の一例

  • 健康保険証の返却
  • 退職後に加入する健康保険制度の選択肢と、その手続き
    (転職先の健康保険、任意継続、国民健康保険、家族の扶養に入る)
  • 退職後に加入する年金制度の選択肢と、その手続き
    (転職先の厚生年金保険、国民年金保険、家族の扶養に入る)
  • 雇用保険の離職票の発行を希望するかの確認と、失業給付の受給手続き
  • 住民税の残額の納付方法
    (特別徴収継続、普通徴収切替、一括徴収)
  • 社会保険料の控除について
    (最後の給与から2か月分控除する場合)
  • 退職金の支給手続き
  • 退職後の住所や連絡先の確認
  • 貸与品の返却方法

上記はあくまで一例です。
会社や退職する従業員の状況に応じて、過不足なく説明を行いましょう。

従業員本人に記入・提出してもらう書類があれば、あわせて案内するとよいでしょう。
(例:退職所得の受給に関する申告書など)

人事給与システムなどの退職処理

人事管理や給与計算のシステムを使用している場合は、各システムの手順に従って、退職の処理を行います。

また、他の社内システムも必要に応じて、退職に伴うアカウントの停止・削除や権限設定の変更などを行いましょう。

退職時の給与計算

社会保険料は1か月遅れで徴収することになっています(例:2月分の保険料を3月支給分給与から控除)。

そのため、退職日や給与の締日・支給日によっては、最後に支給する給与から2か月分の社会保険料を控除する必要が生じます。

また、住民税は、1月~4月の退職者(全員)と6月~12月退職者のうち希望者については、最後の給与から残額を一括で徴収します。

給与計算の際、社会保険料や住民税の控除額の変更を、忘れずに行いましょう。

上記の理由から、最後の給与は通常よりも手取り額が少額になる可能性があります。
退職する従業員へは、このことを事前に説明しておくことをお勧めします。

全ての給与の支払いが完了したら、給与所得の源泉徴収票を作成し、退職した従業員へ交付しましょう。

社会保険の被保険者資格喪失手続き

退職日の翌日から5日以内に、管轄の日本年金機構事務センターへ「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届/厚生年金保険 70歳以上被用者不該当届」を提出します。

退職後に国民健康保険や家族の扶養に入ることを希望する退職者へは、手続きに必要となる健康保険の資格喪失証明書などを交付するとよいでしょう。

雇用保険の被保険者資格喪失手続き

退職日の翌日から10日以内に、管轄のハローワークへ「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出します。

また、退職者が離職票の発行を希望している場合は、「雇用保険被保険者離職証明書」を合わせて提出します。

離職票が交付されたら、速やかに退職者へ送付しましょう。

59歳以上の退職者は、本人の希望に関わらず離職票を交付するように定められています。

住民税の給与所得者異動届出書の提出

退職者が給与の支払いを受けなくなった月の翌月10日までに、給与支払報告/特別徴収に係る給与所得者異動届出書を提出します。

提出先は、1月1日時点の退職者の住所地のある市区町村です。

退職金の支給手続き

加入している退職金制度が定める手順に従い、退職金の支給手続きを行います。

制度によっては、退職者に書類の記入・提出をしてもらう必要が生じることもあるので、人事担当者は手続きの流れをあらかじめ把握しておきましょう。

その他の手続き

退職に伴い、労働基準法に定める帳簿類の整備・保存を行います。

人事給与システムを導入している場合は改めて作成することはないかと思いますが、システムに退職の履歴が残っているか、念のため確認しましょう。

労働基準法の代表的な法定帳簿の例

労働者名簿

出勤簿

賃金台帳

年次有給休暇管理簿

上記の労働基準法の法定帳簿のほか、退職者の履歴書なども保管期間が定められています。

うっかり捨ててしまったり、電子データを消去してしまったりということがないように注意しましょう。

漏れなくスムーズに退職手続きを進めよう

従業員が退職するときは、様々な手続きが必要になります。

また、ここまでに紹介した手続きは一例であり、公的保険の適用状況、加入している退職金制度など、会社により必要となる手続きも異なってきます。

上記の一覧表をベースに、それぞれの状況に応じてチェックリストを作成するなどして、漏れなくスムーズに手続きができるようにしましょう。

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  • この記事を書いた人

福島智美

研究の道から人事の世界に飛び込み、大手医療法人グループで長らく給与計算や社会保険手続きなどを担当する。社会保険労務士やFP2級、第1種衛生管理者の資格を有する事務スペシャリスト。事業会社の人事課長を経てRWCに参画。

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