退職後の社会保険
健康保険
勤務先を退職すると、退職日の翌日に健康保険の被保険者資格を喪失するので、転職先が決まっている場合は、新しい職場の健康保険に加入することになる。もし当面の間、就職する予定が無ければ、住所地を管轄する市町村役場にて、国民健康保険に加入する。
なお、前職時代の収入によっては、国民健康保険より、前職の健康保険を任意継続した方が、保険料を抑えられる場合がある。また高額療養費については、転職により保険者(協会けんぽ、組合健保、国保)が変わると、医療費を合算できないので要注意。
厚生年金保険
健康保険と同様に、退職日の翌日に厚生年金保険の被保険者資格を喪失するが、転職先が決まっている場合は、新しい職場で再び厚生年金保険に加入する。もし当面の間、就職する予定が無ければ、住所地の年金事務所もしくは市町村役場で、国民年金の加入手続きを行う。
当月の健康保険と厚生年金保険料は、翌月の給与から控除することになっているが、退職月に限っては、前月分と当月分の保険料を一括控除することが認められている。ただし保険料は月末時点で判定するため、月の途中で退職した場合は、退職月の保険料は発生しない。
保険料が発生しない=保険に加入していないということなので、転職先未定の場合は、退職月から国民年金に加入する必要がある。
雇用保険
退職すると、ハローワークから雇用保険資格喪失確認通知書と、離職票1および2が郵送されてくる。雇用保険資格喪失確認通知書には、自身の雇用保険被保険者番号が記載されており、この番号は再就職時に新しい勤務先に提示するため、紛失しないように保管しておく。
失業給付(基本手当)を受給しようとする場合は、郵送されてきた書類一式を持参して管轄のハローワークへ行き、失業認定と求職申し込みをしなければならない。なお、基本手当は、離職日の翌日から1年以内に、待機期間等を含めて所定日数分を受給する必要がある。
労災保険
もし、労災保険から療養(補償)等給付や休業(補償)等給付などを受給している労働者が退職した場合であっても、労災保険からの保険給付は継続される。労災保険の受給権は、原則として労働者の退職によって失権することはないからである。
退職後の税金
所得税
■年末調整
給与所得にかかる源泉所得税は、毎年1月〜12月の総支給額をもとに年税額を確定させるため、年の途中で転職した場合は、前の勤め先から送付された源泉徴収票を、新しい職場に提出しなければならない(未提出の場合は、新しい職場で年末調整を受けられない)。
■退職金
税法における退職金は、定年退職を前提としており、退職金は定年後の生活の糧となることから、給与所得に比べて税額が軽減されている。原則として退職金の支給額から、下表により計算した控除額を差し引いた残額に対して、20,42%が課税される。
退職金についても、給与と同様に、所得税を控除した後の手取り額が支給される。
住民税
住民税は、事業主に給与からの控除と市町村役場への納付義務(特別徴収)があるため、転職先においても特別徴収を引き継いでもらうことになる。もし再就職する予定が無ければ、市町村役場から送付されてきた納付書により、自分自身で納付することになる。
なお、住民税の納付は毎年6月〜5月にかけて行うが、1月以降に退職する場合は、勤務先にて5月分までの税額を一括徴収・一括納付することになっている。ゆえに退職時期によっては、社会保険料の一括徴収と相まって、手取り額がほとんど残らないので気をつけたい。
退職後の社会保険と税金のまとめ
保険料が免除される制度もある
勤務先の倒産や違法な過重労働、ハラスメント等によって退職を余儀なくされた場合は、一定期間に限り、国民健康保険料を免除されることがある。また退職理由を問わず、再就職できない期間について、国民年金保険料を一部もしくは全額免除される制度もある。
国民年金は、20〜60歳まで保険料を全額収めた場合に満額受給できるが、保険料の免除を受けた場合は、その分について年金額も減額される。ただし免除から10年以内なら追納できる。
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