就業に関する記事

22 障害者の雇用

障害者の雇用に対する事業主の責務

障害者の雇入れ義務

障害者雇用促進法では、一定数以上の労働者を使用する事業主に対し、法律で定める率(障害者雇用率)にもとづく障害者の雇用を義務付けている。例えば民間企業の障害者雇用率は自社の全労働者数の2.5%以上となっており、つまり逆算すると労働者40名以上の企業において1名以上の障害者雇用が必須ということになる。

また雇用しなければならない障害者とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)など心身の機能に障害がある者をいい、法定雇用数を判定する障害者数(常用雇用障害者数)は、重度障害者は雇用1人につき2人分として、また短時間勤務は雇用1人につき0.5人分としてカウントするという決まりがある。

障害者および重度障害者の定義については、この記事の後段にある「障害者の定義」に詳述しているので参照願いたい。

障害者法定雇用率の表
(厚生労働省 障害者雇用率制度の概要より転載)

なお建設業など、一般的に障害者雇用が難しいとされる業種については、障害者雇用率を軽減するための除外率制度が設けられている。ただし除外率制度はあくまで暫定措置であり、いずれ全ての業種において上表の障害者雇用率が適用される予定となっている。

障害者雇用推進者の選任

障害者の雇用義務のある事業者(例えば民間企業であれば常時使用する労働者が40人以上)は、障害者雇用を促進するために、障害者雇用推進者を選任するように努力し、選任した場合には障害者雇用状況報告書の指定欄にその旨を記載する。

障害者雇用推進者の選任はあくまでも努力義務だが、障害者雇用率を充足させるためには、採用から配属までトータルな受け入れ体制を全社的に構築してゆくことが不可欠なので、社内の旗振り役として人事部長クラスを選任することが望ましいとしている。

障害者の差別禁止および合理的配慮

障害者雇用促進法では、障害者の募集・採用時に事業者が留意すべき点として、①障害者の募集や選考は健常者と均等に取り扱うこと、②障害者から障害に関する何等かの就業上の配慮を求められた場合には、必要な措置を講じなければならないことを規定している。

また採用後は、給与条件、教育訓練、福利厚生施設の利用その他の全ての待遇について、障害者を不当に差別することを禁じており、事業者は障害者が円滑に業務遂行できるよう、障害の状態に応じた施設の整備や援助スタッフを配置したりする等の措置を講じなければならない。

障害者職業生活相談員の選任と届出

障害者を5人以上雇用する事業所では、高齢・障害・求職者雇用支援機構の実施する認定講習を受講した障害者職業生活相談員を選任し、事業所を所轄するハローワークに所定の様式にて選任報告書を提出する必要がある。選任された障害者職業生活相談員は主に次の内容について、障害者の相談にのったり指導を行ったりする。

障害者職業生活相談員の主な職務内容
・適職の選定、職業能力の向上など職務内容に関する相談および指導
・障害に応じた施設設備の改善など作業環境の整備に関する相談および指導
・労働条件、職場の人間関係など職場生活に関する相談および指導
・余暇活動に関する相談および指導
・その他職場適応の向上に関する相談および指導

なお障害者職業生活相談員の選任・届出に限らず、事業主は、自社の従業員に対して、障害者虐待防止法にもとづく障害者虐待防止のための研修を実施したり、障害者が自身の能力や適性を発揮し、生きがいをもって働けるような職場づくりを推進したり、障害者やその家族からの苦情処理体制の整備などもあわせて実施しなければならない。

障害者を解雇するときの届出

障害者は一般の求職者に比べて再就職が困難であることが多いため、障害者を解雇しようとする事業主は、例外なく障害者を雇用している事業所の所轄ハローワークに対して、指定の様式でもって解雇届を提出しなければならない。

なお障害者の解雇に際しては、一般の労働者と同様に、労働基準法(解雇制限期間、解雇予告および解雇予告手当)、労働契約法(解雇権濫用の禁止)の解雇に関する規定が適用されることに注意する必要がある。

障害者雇用状況報告の作成と提出

障害者雇用促進法では、常時40人以上の労働者を使用する事業主(=障害者を1人以上雇用しなければならない義務のある事業主)に対し、毎年6月1日時点の障害者の雇用状況について、所定の様式でもって7月15日までに、管轄のハローワークを経由して厚生労働大臣に報告することを義務付けている。

障害者雇用状況報告書の様式は厚生労働省のWebサイトからダウンロードし、事業所を管轄するハローワークに郵送で提出するが、電子申請によって提出することも可能となっている。ただし電子申請で提出する場合には、事前にGビズIDという行政サービス向けの電子認証IDを取得しておく必要がある。

障害者雇用調整金・障害者雇用納付金

常時使用する労働者が100人以上の事業者

障害者雇用促進法では、常時使用する労働者が100人以上の事業者について、法定の障害者雇用数をクリアした場合にインセンティブを支給し、法定の障害者雇用数をクリアできなかった場合はペナルティを科すことになっている。前者を障害者雇用調整金、後者を障害者雇用納付金といい、主な内容はそれぞれ下記のとおりとなっている。

障害者雇用調整金
・支給額=法定雇用数を超える常用雇用障害者数✕29,000円
・申請方法;所定の申請書を独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に提出
・申請期限;毎年4月1日~5月15日まで
・注意事項;障害者雇用調整金は申請者が指定した金融機関口座に10月~12月の間に振り込まれる
障害者雇用納付金
・納付額=法定雇用数に足りない常用雇用障害者数✕50,000円
・申請方法;所定の申告書を独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に提出
・申告期限;毎年4月1日~5月15日まで
・注意事項;納付金100万円以上の場合は3期での延納可、未申告は追徴金、未納付は延滞金が課される

常時使用する労働者が100人未満の事業者

2024年(令和6年)は、常時40人以上の労働者を使用する民間の事業者は1人以上の障害者を雇用する義務があるが、常時使用する労働者数が100人未満の事業者については前述の障害者雇用調整金・障害者雇用納付金制度は適用されない。ただし一定数以上の障害者を雇用した場合には、報奨金が支給されることもある。

報奨金
・支給額=(常用雇用障害者数-常時使用する全労働者の4%)✕21,000円
・申請方法;所定の申告書を独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に提出
・申請期限;毎年4月1日~7月31日まで
・注意事項;障害者雇用管理に関する労働関係法令違反により書類送検された場合は支給しない

特別給付金

週の所定労働時間が20時間未満かつ重度障害以外の身体障害者と知的障害者は、障害者雇用調整金や障害者雇用納付金もしくは報奨金の算定において、常用雇用障害者数にカウントされない。そこでこれらの障害者のうち、週の所定労働時間が10時間以上の者を雇用している場合には、その人数に応じた特別給付金を支給することにしている。

特別支給金の支給要件
・障害者雇用義務のある事業者
 ~週所定労働時間が10時間以上20時間未満の障害者数✕7,000円
・障害者雇用義務のない事業者
 ~週所定労働時間が10時間以上20時間未満の障害者数✕5,000円
(障害者雇用義務のある事業者=民間の事業者の場合は労働者数40名以上)

申告や申請の実務において、常時使用する労働者数や障害者数、また障害者雇用調整金、障害者雇用納付金、報奨金、特別給付金の算定方法が本サイトの解説よりも若干複雑なので、実際に手続きを行なう際は、以下の解説を熟読した上で、作業を行って頂きたい。

もにす認定マークの取得

もにす認定とは「障害者雇用優良中小事業主認定制度」のことで、常時使用する労働者が300人以下の中小事業主が、法定雇用障害者数以上の障害者を雇用し、厚生労働省の定める認定基準(例;障害者雇用への取り組みやその成果、それらの情報開示の度合い等)を満たす場合に、所轄の都道府県労働局に申請することで認定事業主となることができる。

もにす認定マーク

「もにす認定」の名称は「障害者と共に進む」という意味に由来する。もにす認定を取得すると、自社のホームページや会社案内もしくは求人広告などに、もにす認定マークを使用することができる。

もにす認定を取得すると、企業プロモーションの一環として自社のCSR(企業の社会的責任)への取り組みをアピールできるだけでなく、日本政策金融公庫の低利融資(働き方改革推進支援資金)を受けられたり、ハローワーク主催の合同就職説明会における企業PRや出展資格が優遇されたりと、様々な人事マネジメント上のメリットがある。

障害者の定義

障害者の類型と重度障害の定義

身体障害者の定義

身体障害者とは「障害者の雇用の促進等に関する法律」に規定される身体障害者をいい、原則として身体障害者手帳の交付を受けている者をいうが、身体障害者手帳の交付を受けていなくても、医師の診断書・意見書により身体障害を有すると確認された場合は身体障害者として含める。なお身体障害者のうち重度障害者とは、身体障害者手帳の1~2級該当者をいう。

知的障害者の定義

知的障害者とは「障害者の雇用の促進等に関する法律」に規定される身体障害者をいい、児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医、障害者職業センターによって、知的障害があると判定された者をいう。そのうち療育手帳のA、愛の手帳の1~2度、児童相談所等のA判定等については重度の知的障害とする。

精神障害者の定義

精神障害者とは「障害者の雇用の促進等に関する法律」に規定された精神障害者で、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者、医師から統合失調症、そううつ病、てんかんの診断を受けている者が該当する。また発達障害者とは、精神科医により自閉症、アスペルガー症候群等の学習障害や注意欠陥多動性障害等の診断を受けている者をいう。

障害者手帳の種類

障害者には身体障害、知的障害、精神障害の種別に応じて、それぞれ身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳が交付され、障害者総合支援法にもとづく様々な支援を受けることができる。2023年(令和4年)時点で750万人弱の人達が障害者手帳を交付されている。

障害者手帳の3種別の表
(厚生労働省Webサイト 障害者手帳についてより転載)

障害者雇用に関する資料

障害者雇用の状況

産業別雇用者数の割合

障害者雇用の状況①産業別雇用者数の割合グラフ
(厚生労働省 令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書より弊社作成)

令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書をもとに、産業別の障害者雇用数の割合をまとめてみた。グラフによると障害者の種別にかかわらず卸売・小売業の障害者雇用率が突出して高く、製造業がそれに次いで多くなっている。これは卸売・小売業や製造業では分業化が進んでおり、障害の程度に応じた作業分担を行いやすい就労環境が整っているためと推察する。

事業所規模別雇用者数の割合

障害者雇用の状況②事業所規模別雇用者数の割合グラフ
(厚生労働省 令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書より弊社作成)

事業所規模別の障害者雇用数の割合をみると、小規模事業所では身体障害者の雇用割合が、また大規模事業所では知的障害者および精神障害者の雇用割合が高くなっている。

これは小規模事業者は製造業や小売業が多く、これらの業種は前述のように分業化が進んでいるため、身体障害の態様に配慮すれば自律的に仕事を任せることができること、一方の大規模事業所では人員数に余裕があるため、知的障害者や精神障害者のサポートを行なう者を配置しやすいというそれぞれの事業所規模の特性によるものと考えられる。

職業別雇用者数の割合

障害者雇用の状況③職業別雇用者数の割合グラフ
(厚生労働省 令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書より弊社作成)

職業別雇用者数の割合は、管理的職業、建設・採掘の職業、輸送・機械運転の職業、保安の職業などにおいて、身体障害者の雇用割合が高くなっている。これは身体機能を制限される作業を除くことで障害者も健常者と同じ職務を遂行できること、また健常者として危険有害業務に従事していた者が、労災によって身体障害者になってしまった可能性も考えられる。

週所定労働時間ごとの平均月給

障害者雇用の状況④週所定労働時間ごとの平均月給グラフ
(厚生労働省 令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書より弊社作成)

週の所定労働時間ごとの平均月給(残業代等を除く固定給部分)は、障害の種別に関係なく所定労働時間数の長短に比例している。障害種別ごとの平均月給においては、身体障害者が最も高くなっているが、これは身体障害者の絶対数が、他の障害種別に比べて多いため、各事業所において障害者雇用にかかる処遇の整備と人材の活用が進んでいるからかもしれない。

障害者雇用関連施策について

障害者白書

障害者白書とは、障害者基本法にもとづき1994年(平成6年)から政府が毎年国会に提出する「障害者のために講じた施策の概況に関する報告書」であり、たとえば令和5年度版では、事業者による合理的配慮の提供の義務化等を含む「改正障害者差別解消法」の施行に向けた障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針などをわかりやすく解説している。

障害者雇用に関する総合案内

厚生労働省のWebサイトでは、事業主のために、障害者雇用に関して遵守すべきルール(障害者雇用率、障害者雇用状況報告、障害者の差別禁止や合理的配慮等)や、社内において整備すべき制度(障害者職業生活相談員や障害者雇用推進者の選任等)、障害者が働きやすい職場づくりのポイント、障害者雇用に関する相談窓口等について網羅的に掲示している。

障害者の支援や相談先の総合案内

厚生労働省のWebサイトには、障害者の方を対象とした障害者の就労や生活に関する相談および支援機関、また身体障害、知的障害、精神障害などの障害種別ごとの各種支援施策について、総合的な案内を行なうページも用意されている。事業者においてもどのような制度があるのか知っておくことで、自社の障害者雇用がスムーズにゆくと思われる。

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当サイトは主に小売業に従事する職場リーダーのために、店舗運営に必要な人事マネジメントのポイントを平易な文体でできる限りシンプルに解説するものです。よって人事労務の担当者が実務を行う場合には、事例に応じて所轄の労働基準監督署、公共職業安定所、日本年金事務所等に相談されることをお勧めします。

  • この記事を書いた人

山口光博

コンビニの店長やスーパーの販売課長を経て、31歳の時に管理畑に転職する。以後、20年以上にわたってあらゆる人事マネジメントの実務に携わる。上場準備企業の人事部長として人事制度改革を担当した後に独立、現在に至る。

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