年次有給休暇の目的
年次有給休暇の目的
年次有給休暇は、休暇中の賃金を法令で保障することで、労働者が安心して心身を休養し、疲労を回復するための制度である。法令に規定された労働者の権利なので、有休の取得にあたって使用者の承認は必要ない。
有休の買い取り禁止
どこの職場にも「休暇の代わりにカネをくれ!」という従業員がいるが、退職日までに未取得の有休を消化できない場合を除いて、年次有給休暇の買い取りは禁止されている。理由は前述のとおり労働者の休養が目的だから。
時季指定権と時季変更権
年次有給休暇は法令に規定する労働者の権利なので、労働者は年次救急休暇の取得にあたっては、休暇を取得したい時季を指定するだけでいい。一方で事業の正常な運用を妨げることがないように、事業主には時季変更権が認められている。
有休が認められない場合
労働者が使用者に対する嫌がらせのために、多数の同僚と申し合わせて、同じ時季に一斉に年次有給休暇を取得するような行為は、年次有給休暇に名を借りた、ただのストライキであり、使用者は有休の取得を拒否できるという最高裁判例がある。
年次有給休暇のルール
原則的な付与日数
事業主は、雇入れ日から6ヶ月経過し、その期間の労働日の8割以上出勤した労働者に対し、10日以上の年次有給休暇を付与しなければならない。以後は1年毎に下表の日数の有休を付与するものとし、入社から6年6ヶ月でMAXの年20日間となる。
短時間労働者の比例付与
短時間労働者のうち、週の所定労働日数が4日以下、かつ週の所定労働時間が30時間未満の者に対しては、労働基準法に規定する日数の年次有給休暇を付与しなければならない。この日数は、上表の日数✕週所定労働日数÷5.2(小数点以下切り捨て)でも計算できる。
有休取得時の有休手当
年次有給休暇を取得した日の賃金は、労働基準法に規定する平均賃金によって行う。図では算定事由発生日以前とされているが、賃金締切日で計算して問題ない。なお固定給と変動給(残業代)の締切日が異なる場合は、別々に計算して合算する。
年次有給休暇の取得促進
有休の計画的付与
労働基準法では、前年からの繰越残を含めた有休のうち年5日を除く日数について、予め勤務計画表などによって、半ば強制的に年次有給休暇を取得させる計画的付与を認めている。ただし労使ともに時季指定権と時季変更権は行使できなくなる。
有休の時間単位付与
年次有給休暇は労働者の疲労回復のためのものなので、1日単位での取得が原則である。しかし全国的に年次有給休暇の取得率が上がらないことから、労使協定を締結した場合に限り、年5日分までについて、時間単位で取得させることが認められている。
有休の半日単位付与
労使間で合意した場合には、半日単位で年次有給休暇を取得させることができる。時間単位付与と違って、労使協定は不要であり、年間で取得できる日数の制限もない。
有休の一斉付与
2年次以後の年次有給休暇は、雇入れの日+6ヶ月間を起算日として、毎年更新されるため、労働者の多い事業場では、年次有給休暇の更新事務が煩雑となる。そこで例えば毎年4月1日づけで全従業員の年次有給休暇を一斉に更新するような特例が認められている。
有給取得促進の法令
労働時間設定改善法は、事業主や使用者に対して、労働者のワークライフバランスの実現のために、年次有給休暇の計画的付与を推進する等の措置を講ずる努力義務を定めている。
年次有給休暇の注意事項
年5日間の付与義務
事業主と使用者は、年10日以上の年次有給休暇を付与した労働者について、付与した日から1年以内に5日以上の有休を取得させなければならない。これを年5日の時季指定義務というが、違反した事業主には、未達労働者1名あたり30万円の罰金刑が科される。
有給休暇の消滅時効
年次有給休暇は、付与された日の翌日から2年経過すると時効によって消滅する。消滅時効は、法的な権利を行使しようとしない者まで、その権利を保護する必要はない…という民法の原則的な考え方のひとつである。
年次有給休暇のまとめ
年次有給休暇を付与しなかったら?
以前どこかの経営者が「ウチの業界には年次有給休暇はないから」などとトンデモナイことを放言していたのを見て呆れてしまったが、年次有給休暇は業種や職業を問わずに適用され、違反した事業主には、懲役刑もしくは罰金刑という厳しいペナルティが待っている。
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前述の経営者は恐らく労働契約と請負契約の区別がついていないものと思われる。それにしても労働基準法を知らない経営者が多すぎる。経営は人事に尽きるといっても過言ではないが、その原理原則たる労働基準法を知っていることは、経営者としてマスト要件である。
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