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001(制度概要)_労働基準

女性活躍を支える産前産後休業と妊産婦の就労制限

医療機関や歯科クリニックは女性職員の割合が高く、妊産婦の就労管理はコンプライアンスの遵守のみならず、健全な組織運営において極めて重要な要素です。本記事では、各法律に基づく妊産婦の就労制限の概要や経営者が留意すべき事項について紹介します。

妊産婦の就労制限

妊産婦の就労を制限する主な制度

労働基準法等の関連法令において、妊産婦とは妊娠中の女性と産後1年を経過しない女性をいいます。これらの法令では、母体を保護し、次世代を育成するために就業を制限するいくつかの制度が設けられています。

  • 産前産後休業:女性労働者の出産前後における一定期間の就労を免除する制度です。産前は本人の請求により、産後は請求の有無にかかわらず就労不可です。
  • 妊産婦の就労時間の制限:本人の請求により、産後1年を経過するまで、法定労働時間を超える労働や法定休日労働、あるいは深夜労働が制限されます。
  • 軽易な業務への転換(配置転換):妊娠中の女性が請求した場合、身体的負担の少ない業務へ転換させなければなりません。看護師や介護士は要注意です。
  • 育児時間:生後1年未満の生児を育てる女性労働者に対し、休憩時間とは別に1日2回、各30分以上の時間を付与する制度です。男性は対象外です。

なぜ妊産婦の就労制限が必要なのか?

前述の産前産後休業や妊産婦の就労時間の制限などのルールの根拠は複数の法律におよびます。それぞれの法律において、母体の健康を守り、女性の職業生活の充実を目的として、妊産婦の就労制限について規定しています。

  • 労働基準法:労働条件の最低基準を定めることで、母体の健康を保護し、労働者としての権利を保障します。
  • 労働安全衛生法:法令に定める危険有害業務から妊産婦を遠ざけ、女性労働者の安全および健康を確保します。
  • 男女雇用機会均等法:妊娠・出産等を理由とする解雇や不利益な取り扱いを禁じ、母性を尊重しつつ充実した職業生活を営める環境を整備します。
  • 女性活躍推進法:女性の個性と能力が十分に発揮され、仕事と家庭生活を円滑に両立できるよう、組織的な行動計画の策定や情報公表を求めています。

産前産後休業のポイント

産前産後休業の原則的なルール

産前産後休業は、原則として産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)、産後8週間において、女性労働者の就労を禁止するものです。出産日は産前期間に含まれ、実務では出産予定日から遡及して6週間、出産予定日後8週間を産前産後休業として届出します。

一般的に出産予定日と出産日は一致しないものです。出産が予定より早まった場合はその分だけ産前休業が短縮され、遅れた場合は予定日から実際の出産日までの期間が産前休業として加算されますので、必ずしも6週間(42日間)ピッタリにはなりません。

産前産後休業の注意すべきポイント

産前休業は労働者の請求が条件です。請求がない限り出産当日まで就労させることができますが、産後8週間の産後休業は就業禁止です。ただし産後6週間を経過した女性が請求し、医師が支障ないと認めた業務については、例外的に就労させることができます。

なお女性管理職(労働基準法の労働時間および休憩、休日に関する規定の適用外)であっても、産前産後休業の規定は適用されます。また女性労働者については、育児休業を開始できるのは産後休業が終了した後(男性労働者は子の出生日後)からです。

妊産婦の就労制限のポイント

妊産婦を就労させられない業務

事業者は、妊産婦を危険有害な業務に就かせてはなりません。妊産婦の就労が禁止されている危険有害業務は労働基準法および労働安全衛生法に列挙されていますが、本記事では医療従事者に関わりの深い主な業務をピックアップしてご紹介します。

  • 重量物の取り扱い:妊婦は全ての場合に、産婦は本人の申し出があった場合に、重量物を取り扱う業務への就業が禁止されます。医療現場においては、看護師や介護士による患者(利用者)のベッド移乗などが該当する場合があり、配慮が必要です。
  • 放射線業務:放射線診療に従事する女性の医師、歯科医師、診療放射線技士等については被ばく線量限度が厳格に定められており、妊婦は内部被ばく1mSv、腹部表面の等価線量2mSvを超えないよう、実効線量の測定と管理が義務付けられています。

妊産婦の就労時間に関する制限

妊産婦が請求した場合には、36協定を締結し、所轄の労働基準監督署に届出している場合であっても、時間外労働や休日労働をさせてはならず、管理職以外の女性労働者については、深夜時間帯(午後10時〜午前5時)の就労も禁止されます。

女性の管理監督者については、労働基準法により労働時間・休日の規定が適用除外とされているため、時間外労働と休日労働の免除請求はできません。しかし深夜時間帯の就労は適用除外とされていませんので、管理職であっても深夜時間帯の就労制限を請求できます。

女性の多い医療業界では必須の知識

その他の制度;生理休暇のルール

生理日の就業が著しく困難な女性が請求したときは、生理休暇を与えなければなりません。この場合、生理休暇の日数を限定することは許されず、また半日や時間単位での請求も可能です。なお医師の診断書等の厳格な証明を求めることは適切ではありません。

生理休暇を有給とする義務まではありませんが、生理休暇を取得したことを理由に賞与を減額したり、人事評価を減点するなどの不利益な扱いは、権利の行使を抑制し、生理休暇制度を形骸化させてしまう恐れがあるため、無効とみなされる可能性が高いです。

人的資源管理(HRM)としての重要性

医療業界において、看護部門・歯科衛生部門における女性労働者の割合は、他の産業と比べても圧倒的に高いです。したがって使用者が妊産婦の就労に関する法令を熟知することは、法的リスクの回避のみならず、職員満足度を高め、離職を防止する人事管理の基本です。

常時雇用する労働者が300人を超える事業主は、女性の管理職比率や育児休業取得率等の公表が義務付けられており、200床クラスの病院は概ねこの要件に該当すると思われますが、これらの数値の公表は特に若い人材に対する強力なアピール材料となります。

女性特有の身体的・生理的特徴を踏まえた適切な労務管理を行うことは、職員が安心して長く働き続けられる職場環境を築き、最終的に医療の質の向上(患者満足)と経営の安定へと繋がる不可欠な要素です。本記事が貴院における女性活躍推進の一助になれば幸いです。

本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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