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005(制度概要)_給与計算

手引書が乏しい賞与計算の要点を給与計算マイスターが徹底解説

給与計算の方法を指南した実務書は巷に溢れていますが、これらのうち賞与計算については参考程度にしか触れていないものが大部分です。筆者も四半世紀前に初めて賞与計算を担当した時に大いに悩んだものですが、本記事では賞与計算について徹底的に解説します。

そもそも賞与とは何だろう?

賞与の目的は多種多様

労働の対価としての給与は、労働契約および勤務実績に応じて支給額の決め方などが詳細に規定されており、また法定の労働時間を超える勤務や法定休日あるいは深夜時間帯の勤務に対して、割増賃金の支払いなどが厳格に義務付けられています。

一方で賞与の性質や目的は多種多様です。基本給を補完し生活を保障する「生活給(給与の後払い)」として、あるいは将来の成果や勤労意欲の向上を促す「インセンティブ」、さらには利益還元のための「ボーナス」など、事業者ごとに計算方法がまるで異なります。

法令による賞与の違い

事業者ごとに支給目的の異なる賞与ですが、法令上の取り扱いにおいては、それぞれの制度の目的に応じた明確な定義が存在します。

  • 労働基準法・労働保険料:労働の対償として「賃金」に含まれます。
  • 社会保険料(健康保険・厚生年金保険等):毎月の標準報酬月額ではなく、「標準賞与額(支給額の千円未満切り捨て)」に基づき保険料を計算します。
  • 源泉所得税:毎月の給料と同様に「給与所得」に含まれ、源泉徴収の対象となります。

労災保険の保険給付は、事故発生前3ヶ月間の賃金総額をもとに給付基礎日額を算定するため、賞与は含まれません。しかし、労災保険料の賃金総額には賞与が含まれているため、給付との不均衡を調整する目的で「ボーナス特別支給金」として還元される仕組みが採られています。

賞与計算の具体的な流れ

支給額の決定

多くの企業では夏季および冬季の年2回支給する運用が多くみられます。実務上は、半期ごとの業績をもとに企業全体での賞与原資(支給総額)を決定し、その枠内で人事評価をもとに役職や個人ごとの配分額を決定するのが一般的な方法です。

配分設定にあたり重要となるのが、2026年10月1日に施行される改正「同一労働同一賃金ガイドライン(短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止に関する指針)」への対応です。同改正により、パートタイマーや契約社員などの有期雇用・短時間労働者に対しても、正規雇用労働者と同等の賞与の支給が義務付けられます。

控除額の計算

賞与から差し引く控除項目には、「法定控除」と「法定控除以外の控除」が存在します。これは給与計算と同様ですが、法定控除する額の計算において、給与計算時と異なる取り扱いとなるものがいくつかありますのでご注意下さい。

  • 法定控除:社会保険料(健康保険料、介護保険料、子ども・子育て支援金、厚生年金保険料)、雇用保険料、源泉所得税が該当します。なお、個人住民税は前年所得に基づき6月から翌年5月までの毎月給与から特別徴収されるため、賞与から控除することはありません。
  • 法定控除以外の控除:社宅費や社内融資の返済金、親睦会費などを賞与から控除する場合は、給与計算と同様に労働基準法第24条第1項(賃金全額払いの原則)の例外を適用するため、あらかじめ労使協定の締結(行政への届出は不要)が必要です。

賞与計算の肝は法定控除

社会保険料の控除

月次の給与計算では「標準報酬月額」を使用しますが、賞与計算では支給額の千円未満を切り捨てた「標準賞与額」に、各種保険料率を乗じて算出します。なお、標準賞与額には以下の通り上限(限度額)が設けられています。

  • 健康保険(介護保険・子ども子育て支援金含む):年度(4月1日〜翌年3月31日)累計で573万円が上限。
  • 厚生年金保険:同月内の支給につき150万円が上限。

たとえば夏季賞与200万円、冬季賞与200万円、期末賞与200万円の計600万円の賞与が支給された場合、健康保険では期末賞与の標準報酬月額は173万円となります(合計で573万円迄)。また厚生年金保険では、それぞれの標準賞与額が150万円となります。

雇用保険料の控除

雇用保険料の計算は毎月の給与計算と同一です。賞与支給総額に対し、被保険者(従業員)負担率を乗じた金額を計算し控除します。なお雇用保険料は雇用保険本体部分(労使折半)と雇用保険2事業部分(全額を事業主負担)で構成されている点にご注意願います。

源泉所得税の控除

賞与に対する源泉所得税は、原則として「賞与に対する源泉所得税の算出率の表」を用いて計算します。前月の月額給与から社会保険料等を控除した後の金額と、扶養親族等の数をもとに算出率を求め、賞与の額(社会保険料控除後)に乗じます。

ただし、前月に支給した給与がない場合や、支給する賞与の額(社会保険料控除後)が前月の給与(社会保険料控除後)の10倍を超える場合には、月額表を用いた例外的な計算を行います。この場合、賞与額の6分の1(賞与の計算期間が6ヶ月を超える場合は12分の1)に相当する額を前月給与に合算して月額表に当てはめ、そこから前月給与分の税額を差し引いた差額に6(または12)を乗じて算出します。

賞与を支払った後は?

賞与支払届と社会保険料の納付

賞与を支給した事業主は、支給日から5日以内に、管轄の年金事務所(医療健保組合等に加入している場合は、年金事務所と健康保険組合へそれぞれ提出)へ「被保険者賞与支払届」を提出する義務があります。

賞与に係る社会保険料は労使折半で負担し、従業員控除分と事業主負担分を合算して、支給日の属する月の「翌月末日」までに日本年金機構等へ納付します。なお、健康保険料、介護保険料、子ども・子育て支援金は、年金機構を経由して各機関に納付されます。

雇用保険料の納付は一括で行う

賞与から控除した雇用保険料は、支給の都度納付するのではなく、毎月の給与分とともに自社の会計において「職員預り金」等の勘定科目(負債科目)としてプールしておきます。

毎年6月1日から7月10日の間に行う「労働保険の年度更新」手続きにおいて、前年度(4月1日〜翌年3月31日)に支払った賃金総額に含めて年間の労働保険料を再計算し、雇用保険の職員預かり金を充当して一括納付(または延納=分割納付)を行います。

源泉所得税の納付と年末調整

賞与から控除した源泉所得税は、支給日の翌月10日までに所轄の税務署に納付します(徴収高計算書の提出)。実務上は賞与にかかる源泉所得税と賞与支払い月の給与にかかる源泉所得税をまとめて納付することになります。

ちなみに賞与から徴収した所得税も、給与と同様にあくまでも概算額なので、年末調整の時に確定した年税額と1年間(1月~12月)に徴収した概算額を相殺します。もし1年間に徴収した概算額に不足があれば追徴、過剰があれば12月の給与支給時に還付されます。

帳票類の調製と法定保存年数

賞与計算のデータは、法令に定められた法定帳簿等に正しく記載し、所定の期間保管することが義務付けられています。

  • 賃金台帳:労働基準法で調製および保存が義務付けられているものです。賞与の支給額、控除額などを記録し、原則5年間(経過措置として当面の間は3年間)保存します。
  • 源泉徴収簿:所得税法により調製および保存が義務付けられているものです。年末調整等の基礎となる各人の徴収実績を記録し、該当年の翌年1月1日から7年間保存します。

支給額と控除額をそれぞれ計算し、その差額(手取り額)を支給日までに労働者が指定する金融機関の口座に振り込む手順は、給与計算も賞与計算も変わりません。なお賞与は就業規則の相対的記載事項に該当するため、賞与を支給するのであれば就業規則への明記が必要です。

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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/人事コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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