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02_経理のしごと

会計仕訳(給与計算⑤)年末調整

年末調整は給与計算の総決算ともいえる重要な作業です。毎年1月~12月中に支払った給与・賞与から徴収して納付した源泉所得税はあくまでも概算額なので、年度末の扶養家族等の状況に基づき計算した確定額(年調年税額)との差額を清算する作業が必要になります。

源泉所得税の徴収と納付

所得は給与所得だけではありません。例えば事業所得、不動産所得、山林所得などがありますが、これらは確定申告で税額を申告・納付します。一方の給与所得については、給与支払者が予め税額(概算額)を徴収して納付するルールになっており、これを源泉徴収制度といいます。ゆえに給与所得にかかる所得税を源泉所得税といいます。

源泉所得税は給与および賞与を支払う都度、給与支払者(事業主)が徴収し、翌月10日までに所轄の税務署に納付します。何度も申し上げるように、これらは概算額ですが、本来の源泉所得税は1年間の総支給額と扶養家族や保険料の支払い額等に基づき決定しますので、12月の給与計算時に年調年税額を計算して、概算額との差異を清算します。

給与等の条件設定

源泉所得税の納付

次の元帳は1月~12月までの「職員預り金_源泉所得税」の元帳です。本カテゴリーの『会計仕訳(給与計算①)費用の計上と給与の支払』記事および『会計仕訳(給与計算②)諸税(所得税・住民税)の納付』記事のケースを踏襲した金額設定です。

元帳:職員預り金_源泉所得税

(借)勘定科目金額(貸)勘定科目金額摘要
職員預り金_源泉所得税5,430円現金預金75,311円1月度源泉所得税
職員預り金_源泉所得税5,430円2月度源泉所得税
職員預り金_源泉所得税5,430円3月度源泉所得税
職員預り金_源泉所得税5,430円4月度源泉所得税
職員預り金_源泉所得税5,430円5月度源泉所得税
職員預り金_源泉所得税5,430円6月度源泉所得税
職員預り金_源泉所得税5,430円7月度源泉所得税
職員預り金_源泉所得税15,581円夏季賞与源泉所得税
職員預り金_源泉所得税5,430円8月度源泉所得税
職員預り金_源泉所得税5,430円9月度源泉所得税
職員預り金_源泉所得税5,430円10月度源泉所得税
職員預り金_源泉所得税5,430円11月度源泉所得税
現金預金18,698円職員預り金_源泉所得税18,698円冬季賞与源泉所得税
現金預金5,430円職員預り金_源泉所得税5,430円12月度源泉所得税
借方計99,439円貸方計99,439円*****

1月~11月分の源泉所得税はすでに納付済みなので「職員預り金_源泉所得税」の残高はありません。一方で冬季賞与と12月度の源泉所得税の納期限は翌年1月10日なので、年末調整の時点では未払いの「職員預り金_源泉所得税」残高が残っています。

厳密には年末調整は12月度の給与計算で行うため、年末調整前の時点では12月度の源泉所得税は計上されていません。本記事では論点をわかりやすくするために、12月度の源泉所得税を元帳に表示しています。

会計ルールのおさらい

「年調年税額>概算額=追徴」なら、12月度の源泉所得税(概算額)と同様の仕訳を行います(借方:現金預金↔貸方:職員預り金)、「年調年税額<概算額=還付」なら、正反対の仕訳(借方:職員預り金↔貸方:現金預金)を起こします。

会計仕訳パターン(年末調整)

年調年税額の計算

年末調整(源泉所得税額の確定)を行います。本ケースの従業員は扶養家族(中学生の子)1名で、満額の生命保険料控除を受けられるものとし、『令和8年度 年末調整のしかた(国税庁)』に基づき、次のステップで年調年税額を計算してみます。

  • 課税給与収入:年間総支給額 4,500,000円 - 非課税通勤手当 60,000円 = 4,440,000円
  • 給与所得控除後の金額:給与所得控除後の給与等の金額の表(4,440,000円当てはめ)= 3,112,000円
  • 所得控除の額:合計 1,867,175円
    • 社会保険料控除:707,175円(健康・介護・子育て・厚生年金 684,675円 + 雇用保険 22,500円)
    • 生命保険料控除:120,000円(最高限度額適用)
    • 扶養控除:0円(15歳以下の年少扶養親族は対象外)
    • 基礎控除:1,040,000円(令和8年分改定:本則62万円 + 特例加算42万円)
  • 差引課税給与所得金額:3,112,000円 - 1,867,175円 = 1,244,825円 → 1,000円未満切捨て後 1,244,000円
  • 算出所得税額:1,244,000円 × 5% = 62,200円
  • 年調年税額:62,200円 × 102.1% = 63,506.2円 → 100円未満切捨て後 63,500円
  • 過不足額の精算63,500円(年調年税額) - 99,439円(源泉徴収税額合計) = ▲35,939円(還付)

令和8年度年末調整の注意点

  1. 令和8年分の基礎控除引上げ:年収475万円以下の給与所得者の基礎控除額が従来の48万円から104万円に引き上げられ、課税所得が抑えられています。
  2. 中学生のお子様の扶養控除:16歳未満の年少扶養親族は所得税法上の扶養控除対象外(0円)となります。
  3. 雇用保険料の社会保険料控除:労働者負担分の雇用保険料(月給・賞与合計22,500円)も社会保険料控除に含まれます。

年調年税額との清算

年末調整の結果、この従業員は35,939円の還付を受けられることになりました。還付金は現金預金を貸方に計上して支払い(資産→減)ます。また相手科目(借方)は「職員預り金_源泉所得税」科目で計上します。

12月度給与支払い時

(借)勘定科目金額(貸)勘定科目金額摘要
職員預り金_源泉所得税35,939円現金預金35,939円◯年度年末調整還付金
借方計35,939円貸方計35,939円*****

元帳残高:職員預り金_源泉所得税

(借)勘定科目金額(貸)勘定科目金額摘要
職員預り金_源泉所得税99,439円◯年度 徴収分
職員預り金_源泉所得税99,439円◯年度 納付分
職員預り金_源泉所得税35,939円◯年度 還付金
残高▲35,939円*****

「職員預り金」は負債科目ですので残高は貸方に表示されます。そして源泉所得税を納付する時に反対仕訳を行い、「職員預り金」残高を消去します。しかし還付金を支払ったことで、「職員預り金_源泉所得税」が35,939円分のマイナス残高となってしまいます…。

これについては、翌年1月以降に徴収する源泉所得税と相殺します。従業員には給与支払者から還付金が支払われており、給与支払者は1月以降に納付する源泉所得税と還付金にかかる職員預り金を相殺することで、立て替え払いした税金の還付を受けられる仕組みです。

年末調整終了後の事務処理

法定調書の作成と提出

年末調整が終わったら、翌年1月末までに法定調書および給与支払報告書を作成・提出します。特段の会計仕訳は発生しませんが、市町村に提出した給与支払報告書に基づき、次年度の個人住民税の額が決定されることについて、給与計算担当者は知っておくべきでしょう。

  1. 提出期限と提出先
    期限は給与等を支払った年の翌年1月31日までです。法定調書等は所轄の税務署へ、給与支払報告書は各市区町村へ提出します。
  2. 源泉徴収票・法定調書(税務署提出分)
    提出対象は、年末調整済みの場合は年間の給与支給額が500万円を超える一般社員等、未調整の場合は250万円を超える者などです。また、前々年の提出枚数が100枚以上(令和9年1月以降は30枚以上)の場合は電子提出が義務付けられています。
  3. 給与支払報告書(市区町村提出分)
    原則として1月1日現在のすべての従業員分を提出し、年途中の退職者も支払金額が30万円を超える場合は必要です。住民税の判定に関わる年少扶養親族などの正確な記載が求められます。
  4. マイナンバーの取り扱い
    税務署・市区町村提出用にはマイナンバーを記載しますが、受給者本人交付用の源泉徴収票には記載してはなりません。
  5. 作成時の確認・チェックポイント
    源泉徴収簿や各種申告書との内容突合を行い、摘要欄の記載事項に漏れがないか確認します。

帳票類の保存その他

  • 源泉徴収簿の保存:所得税法に定める税務書類として、7年間の保存が義務付けられています。
  • 賃金台帳の保存:労働基準法により調製と保存(原則5年間、当面は3年間)が義務付けられています。
  • 給与計算ソフトの年度更新:年調モレ等が無ければ、給与計算ソフトの年度を新年度に更新します。
  • 扶養控除申告書の確認:扶養控除申告書の記載内容に基づき、給与計算ソフトの所得税マスタを更新します。

扶養控除申告書の提出が無い場合、翌年1月以降は甲欄で源泉徴収することができません(税率の高い乙欄が適用されます)。

賃金計算を受託している社労士は少なくありませんが、社労士が関与できるのは12月度の賃金計算までです。理由は法定調書や市町村給与支払報告書は税務書類に該当するため、社労士が関与すると税理士法違反となるからです。年末調整を受託しない社労士も少なくありませんので、給与計算担当者は年末調整およびその会計仕訳をきちんと理解しておく必要があります。

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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/人事コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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