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004(制度概要)_雇用政策

複雑でわかりづらい出産・育児に関する制度の全体像を俯瞰する

これまで当サイトでは出産や育児に関する休業や就労制限、給付金等について解説してきました。一方で出産や育児に関する法令や社会保険制度は多岐にわたり複雑で判りづらいのも事実です。そこで本記事ではこれらの法令や制度を俯瞰できるよう全体像をまとめました。

出産育児中の就業に関する法令

妊産婦の就労制限

労働基準法に基づき、女性労働者は出産予定日前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)および産後8週間について産前産後休業を取得できます。産前休業は女性労働者が希望した場合に取得させる義務がありますが、産後休業は本人の希望に関わらず就労が禁止されています。

また、妊産婦が請求した場合は、1週間および1日の法定労働時間を超える変形労働時間制の適用や時間外労働・休日労働・深夜労働はさせられません。さらに、生後満1年に達しない生児を育てる場合は、1日2回各々少なくとも30分の育児時間を請求可能です。

育児期間中の就労配慮

育児・介護休業法により、労働者は原則1歳未満(保育所に入所できない等の場合は最大2歳まで)の子を養育するために育児休業を取得できます。産後8週間以内に最大4週間取得できる出生時育児休業(産後パパ育休)や、両親ともに休業する場合に期間を1歳2ヵ月まで延長できる「パパ・ママ育休プラス」も設けられています。

また、事業主は3歳未満の子を育てる労働者への短時間勤務制度の適用や、3歳から就学前までの子を育てる労働者に対し在宅勤務や時差出勤等の柔軟な働き方を含む複数の措置を講じる義務があります。

出産育児中の経済的保障に関する制度

産休中の経済的保障

健康保険では、産前産後休業中に報酬(給与)が支払われない場合に、休業1日につき、直近12ヵ月間の標準報酬月額平均の30分の1相当額(標準報酬日額)の3分の2に相当する「出産手当金」を産前42日(多胎98日)から産後56日まで支給します。

また、妊娠4ヵ月以上の出産に対し、1児につき原則50万円(産科医療補償制度の対象外となる出産は48万8,000円)の「出産育児一時金」が支給されます。出産育児一時金については、健康保険の被扶養者も支給対象となります(家族出産育児一時金)。

育児休業中の経済的保障

雇用保険には、原則1歳未満の子を育てるための休業中に、休業開始時賃金日額の67%(休業181日目以降は50%)相当額を支給する「育児休業給付金」や、産後パパ育休中に同率で支給する「出生時育児休業給付金」があります。

さらに、父母がともに14日以上の育児休業を取得した際、最大28日分にわたり賃金日額の13%を上乗せする「出生後休業支援給付金」や、2歳未満の子を育てるための時短勤務中に賃金の10%を支給する「育児時短就業給付金」も新設されています。

出産育児中の社会保険料に関する制度

出産育児中の社会保険料の免除

健康保険法および厚生年金保険法において、休業期間中の生活安定を図るため、社会保険料の免除制度があります。産前産後休業および育児休業等(3歳未満の子を養育する休業)を取得している期間について、被保険者負担分と事業主負担分の双方が免除されます

免除期間は、休業開始日の属する月から休業終了日の翌日が属する月の前月までです。また、1ヵ月未満の育児休業等でも、月内に14日以上取得した場合はその月の月給に係る保険料が免除されます。なお、出産時は自営業者(国保・国年)も保険料が免除されます。

個人開業医等の自営業者(国保・国年の被保険者)には「休業」という概念がありませんので、出産月(出産予定月)の前月から翌々月までの4ヶ月間について、保険料が免除されます。

休業終了後の社会保険料の改定

社会保険料の改定は原則として年1回(定時決定)ですが、被保険者が産前産後休業または育児休業等を終了し、職場復帰後に時短勤務を選択して報酬(給与)が低下した場合、随時改定よりも緩い要件で標準報酬月額を改定できる特例があります。

随時改定には2等級以上の変動や3ヶ月全て報酬支払基礎日数をクリアしていること等の厳格な要件がありますが、この特例では、1等級の変動であっても、あるいは1ヶ月しか報酬支払基礎日数をクリアできなくても、被保険者の申出により翌月から改定されます

3歳未満育児の年金特例

厚生年金保険では、子を養育するために時短勤務を選択し、産前産後休業終了時改定あるいは育児休業終了時改定(前述)を行った場合に、子が3歳に達するまでの期間について、特例措置(養育期間の標準報酬月額の特例)を設けています。

この制度は、社会保険料の徴収は改定後の(低下した)標準報酬月額で、将来の年金給付額の計算は改定前(低下する前)の標準報酬月額に基づき計算するものです。この特例により社会保険料の負担を抑えつつ、将来受け取ることができる年金水準を維持できます。

出産育児促進のための職場環境の整備

一般事業主行動計画の策定と公表

常時雇用する労働者が100人を超える一般事業主は、仕事と子育ての両立支援に向けた「一般事業主行動計画」を策定・公表し、労働局へ届け出る義務があります。計画目標を達成し一定基準を満たすと、厚生労働大臣より「くるみん」の認定が受けられます。

また、100人超の企業には女性の活躍推進に向けた行動計画の策定・届出や情報公表が義務付けられており、基準適合により「えるぼし」等の認定制度が用意されています。令和8年4月には「えるぼし認定プラス(妊娠に配慮した休暇制度等)」が新たに追加されました。

出産育児に関するハラスメント防止措置

男女雇用機会均等法および育児・介護休業法において、妊娠、出産、育児休業、時短勤務等の制度利用を理由とする解雇その他の不利益取扱いは一律に禁止されています。また産前産後休業中およびその後30日間は労働者を解雇できません(労働基準法)。

また、職場におけるマタニティハラスメントやパタニティハラスメントを防止するため、事業主には相談窓口の設置などの雇用管理上必要な措置を講じる義務が課されています。労働者がこれらの相談等を行ったことを理由とした不利益な取扱いも厳に禁止されています。

育児・介護休業法では、常時雇用する労働者数が300人を超える事業主に対し、自社における男性労働者の育児休業の取得率を毎年公表する義務も定めています。またこれらと並行して児童手当も受給できますが、こちらについては別の記事で詳しく解説します。

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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/人事コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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