人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。
依頼者からのご相談

当院は歯科医師2名、歯科衛生士4名、歯科助手・受付3名の計9名が勤務する歯科クリニックです。この度、雇用契約書で「週3日勤務(月・水・金)」と定めているパートタイムの歯科衛生士が退職することになりました。
退職に伴う有給休暇の消化にあたり、当該スタッフから「退職日までの期間に週5日分の有給休暇を取得したい」と申請がありました。しかし当院の事務長は、「契約上週3日勤務なのだから、週に3日分しか有給申請はできない。また、本来の所定労働日ではない火曜日に出勤し、代わりに金曜日を有給にすることもできない」と主張しています。
退職直前ということもあり診療体制の調整も含めて困惑しております。事務長の主張通り、週3日を超える有給申請や所定労働日以外との振替による有給取得は認められないのでしょうか?
ご相談への回答

結論から申し上げますと、事務長様の「週3日勤務であれば、1週間につき申請できる年次有給休暇は3日分までである」という見解は、労働基準法上まったく正しく、適法な対応です。
年次有給休暇の取得要件と、シフト変更が生じた際の有給取得の取り扱いについて、法的根拠に基づき論点ごとに解説いたします。
労働義務のない「公休」に有給休暇を充てることは不可
年次有給休暇は、労働基準法上「労働義務のある日(所定労働日)」に労働を免除する制度です。したがって、もともと労働義務がない公休日に有給休暇を取得することは原則としてできません(年次有給休暇を取得しようがありません)。
週3日勤務のパートスタッフの場合、週のうち残り4日は公休(労働義務のない日)となります。公休日に有給休暇を割り当てて賃金を支払う行為は、実質的に「有給休暇の買い上げ」に該当します。労働基準法では、労働者の心身の疲労回復とリフレッシュを目的とする年休の買い上げを原則として禁止しています。
ただし、退職日までに消化しきれなかった未消化の年次有給休暇について、退職時に金銭で買い上げることは、例外的に違法とはならず貴院の判断に委ねられます。しかし、在職中の通常の権利行使として「労働義務のない日を含めて週5日分の有給を取得する」という申請を受け入れる義務は貴院にはありません。
勤務日の「振替」を行っていない場合の有給取得
次に、週3日(月・水・金)勤務のスタッフが出勤状況によって(月・火・水)に出勤し、金曜日に有給休暇を申請する場合の取り扱いについてです。
事前にあらかじめ労使間で「金曜日の労働日を火曜日に振り替える」という「休日の振替(振替休日)」の手続きを正しく行っていた場合、金曜日は法的に「公休日(労働義務のない日)」に変わります。そのため、変更後の金曜日に有給休暇を充当することはできません。
しかし、事前に適切な事前振替の手続きを行わず、単に火曜日に臨時出勤(休日労働等)させただけであった場合、金曜日は依然として「所定労働日(労働義務のある日)」のままです。この場合、金曜日は労働日であるため、スタッフが金曜日に年次有給休暇を取得申請することは法的に有効であり、貴院はこれを拒否できません。
本件のポイント

- 雇用契約書で定めた週所定労働日(労働義務のある日)以外の日に対して、スタッフが年次有給休暇を申請することはできないことを明確に説明する。
- 退職時に消化しきれなかった未消化の年次有給休暇について買い上げを行うか否かは、院内の取扱い方針(就業規則等の規定)に基づき院長・経営者が適切に判断する。
- 臨時で出勤日を変更させる場合は、事前に「休日振替」の手続き(あらかじめ振り替える日を特定して通知すること)を厳格に行い、労働日と公休日を明確に区別して勤怠管理を行う。
本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


