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001(制度概要)_労働基準

管理職は使用者か?それとも労働者か?法令の定義と責任の所在

医療機関には多様な立場の人が働いており、労基法上の「使用者」と「労働者」の定義は権限と責任を明確にする土台です。特に開設者や管理者などの医療機関特有の役職が絡むと境界線が複雑になります。

本記事では医療機関における労基法の定義を掘り下げ、それぞれの具体的な責任や管理職の正しい扱いについて解説します。

労働基準法における「使用者」と「労働者」の定義

労働基準法第10条に規定される「使用者」の3つの範囲

労働基準法第10条において、「使用者」とは以下の3種類を指します。

  1. 事業主:その事業の経営主体を指し、個人経営であればその個人、法人組織であれば法人そのものです。
  2. 事業の経営担当者:法人の代表者、理事、取締役など、経営全般について権限と責任を持つ者です。
  3. 事業主のために行為をするすべての者:部長、課長、師長、事務長など、労働条件の決定や業務命令、指揮監督の権限を与えられている者です。

雇用形態・国籍を問わない労働者の定義と判断基準

労働基準法第9条では、労働者を「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」と定義しています。この定義は、国籍、雇用身分(正規・非正規)、勤務時間の多寡、給与体系(月給・日給など)によって区別されません。

不法就労の外国人であっても、実態として使用従属関係にあり賃金が支払われていれば、労働基準法上の労働者に該当します。

人事担当者必見!使用者と労働者それぞれの責任

使用者が負うべき義務(賃金、労働時間、安全配慮義務)

使用者は、労働基準法が定める最低限の労働条件(賃金支払い、労働時間管理、有給休暇の付与など)を遵守する義務があります。

また、労働契約法第5条に基づき、労働者が生命・身体等の安全を確保しつつ労働できるよう必要な配慮を行う安全配慮義務を負っています。これには、過重労働による心身の健康障害防止も含まれます。

労働災害防止のための協力義務と健康診断受診の必要性

労働法規の多くは使用者への義務を定めていますが、一部の法令においては労働者も一定の責任を負います。

たとえば労働安全衛生法では、労働者は労働災害を防止するために必要な事項を守る義務があり、事業者が実施する安全衛生措置に協力するよう努めなければならないとしています。具体的には、事業者が実施する健康診断を受診する義務などです。

管理職は使用者か?それとも労働者か?

管理職は労働者の過半数代表者にはなれない

就業規則の作成・変更や労使協定(36協定など)の締結に際し、労働者の過半数代表者を選任する必要があります。

この際、労働基準法第41条第2号に規定する「管理職(管理監督者)」は、代表者になることはできません。それは管理職は一般職にとっては使用者であり、使用者であるものが労働者の代表者となることは、双方の利益に相反するからです。

一方で管理職も労働者ですから、労働者の過半数代表者の選出手続きにおいて、投票や挙手などで意思を表明することは可能です。

ただしあくまでも労働者のひとりとして意思を表明できるに過ぎず、特定の労働者を代表者に指名するよう他の労働者に指示するようなことは認められません(選出された代表者による署名や押印は無効です)。

「名ばかり管理職」は労働者とみなされる

労働基準法の管理職には、労働時間、休憩、休日に関する規定が適用されず、法定労働時間を超える残業や法定休日出勤に対して割増賃金を支払う義務はありません。

しかし仕事に対する裁量権が乏しく、一般職と同じシフト表で勤務し、管理職として相応の待遇が与えられていない場合は「名ばかり管理職」とみなされ、労働基準法が厳格に適用されます。

なお労働基準法の管理職として認められる場合であっても、深夜労働に対する割増賃金の支払義務は免除されません。管理職が対象外とされる「労働時間」とは「労働時間の量」であり「労働する時間帯」は含まれていないからです。

また労働安全衛生法では、過重労働防止のために管理職を含めて出退勤時刻の記録を義務付けている点にご注意ください。

医療機関特有の役職と労働基準法との関係

医療法上の「開設者」「管理者」「院長」とは?

医療法上の定義と実務上の呼称には以下の違いがあります。

  • 開設者:病院を設置し、経営の主体となる者(法人や個人)です。医療法人の場合は理事長であることが一般的です。必ずしも医師や歯科医師でなければならないわけではありません。実際に事務長が医療法人を開設して理事長に就任する事例もあります。
  • 管理者:医療法に基づき、病院を実地で管理する責任者です。原則として医師または歯科医師でなければならず、医療安全の確保や従業員の監督責任を負います。
  • 院長:通常は管理者のことを指す病院内での役職名です。

医療機関における使用者と労働者の区別

病院における管理職(労基法上の使用者としての側面を持つ者)は、院長や副院長だけでなく、各診療科の部長、看護部門の師長、事務部門の事務長などが含まれます。

これらの者は、下位の職員に対して業務上の指揮命令を行う権限を持っており、現場における労務管理の実務を担っています。

またこれらのうち、労働契約によって医療法人もしくは個人開業医に雇用される者は、労働者にも該当します。

なお医療法人の院長や副院長など上級幹部のうち、理事(委任契約)とされる者については労働者から除外されます。要するに最終的な判断の決め手は「委任契約」か「労働契約(雇用契約)」かの違いによります。

医療機関における「使用者」と「労働者」の役割を正しく理解することは、適正な労務管理と安全確保に不可欠です。双方が負う義務を遵守し、「名ばかり管理職」を防ぐためにも実態を見極める必要があります。

組織構造が複雑な現場だからこそ、各々の立場を明確にし、法令遵守と健全な職場づくりに努めましょう。

本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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