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02_経理のしごと

会計仕訳(給与計算④)労働保険料の納付

労働保険料(雇用保険料と労災保険料)は保険年度(4月~翌年3月)における事業所全体の賃金支払総額をもとに保険料を徴収・納付します。また雇用保険料のうち雇用保険二事業分および労災保険料は事業主が全額を負担します。1年分の法定福利費を一括計上する事業所もありますが、適切な業績コントロールのために月次での計上を推奨します。

労働保険料の徴収と納付

歯科クリニックの場合、医療法人・個人開業を問わず、労働者を使用すれば労働保険(労災保険および雇用保険)の適用事業所となります。労働保険料は労災保険料と雇用保険料から構成され、1年間に支払った事業所単位の賃金総額に対し、業種ごとの保険料率(医療業:労災0.3%、雇用1.35%)を乗じて得た額を一括して納付します。

労災保険は労働基準法に定める事業主の災害補償義務(労災事故に被災した労働者に対する経済的な補償を行う義務)を代行するため、保険料の全額を事業主が負担します。一方で雇用保険料は雇用保険本体部分(1%)を労使で折半し、雇用保険二事業(雇用関係助成金等)にかかる保険料(0.35%)は事業主のみが負担する仕組みとなっています。

給与等の条件設定

概算労働保険料の納付

前年度の確定労働保険料が68,000円の場合、当年度の賃金総額が前年度から大きく変更される予定がなければ、概算労働保険料も68,000円になります。いったん仮払金勘定で68,000円を納付しておき、翌年の労働保険の年度更新(6月1日~7月10日)時に、今年4月~翌年3月の期間中に支払った賃金総額を元に計算した確定労働保険料と差額を清算します。

◯年7月10日

(借)勘定科目金額(貸)勘定科目金額(摘要)
仮払金_労働保険料68,000円現金預金68,000円◯年度概算労働保険料
借方計68,000円貸方計68,000円*****

法定福利費と未払費用

本記事では前回の記事「会計仕訳(給与計算①)費用の計上と給与の支払」に基づき、年度更新時の労働保険料にかかる未払費用と職員預り金の処理方法について解説します。まず労働保険の事業主負担分です。期間損益の原則に基づき、賃金支払月に費用(法定福利費)計上しますが、次年度の労働保険確定申告の時まで、未払費用(負債)で計上しておきます。

元帳:未払費用

(借)勘定科目金額(貸)勘定科目金額摘要
諸口51,750円未払費用_労働保険料3,680円4月度労働保険料
未払費用_労働保険料3,680円5月度労働保険料
未払費用_労働保険料3,680円6月度労働保険料
未払費用_労働保険料3,680円7月度労働保険料
未払費用_労働保険料3,450円夏季賞与労働保険料
未払費用_労働保険料3,680円8月度労働保険料
未払費用_労働保険料3,680円9月度労働保険料
未払費用_労働保険料3,680円10月度労働保険料
未払費用_労働保険料3,680円11月度労働保険料
未払費用_労働保険料4,140円冬季賞与労働保険料
未払費用_労働保険料3,680円12月度労働保険料
未払費用_労働保険料3,680円1月度労働保険料
未払費用_労働保険料3,680円2月度労働保険料
未払費用_労働保険料3,680円3月度労働保険料
借方計51,750円貸方計51,750円*****

個々の仕訳における「未払費用」の相手科目(借方)は「法定福利費_雇用保険料」と「法定福利費_労災保険料」ですが、元帳集計において相手科目が複数ある場合は、諸口で一括りに表示されることが一般的です。

法定控除と職員預り金

雇用保険の被保険者負担分の会計仕訳です。雇用保険の場合は社会保険(月の末日時点の被保険者資格により保険料が発生=翌月の給与から保険料を控除)とは異なり、当月の賃金から当月の雇用保険料を控除します。控除した雇用保険料(被保険者負担分)は、次回の労働保険の確定申告まで職員預り金(負債)としてプールしておきます。

元帳:職員預り金

(借)勘定科目金額(貸)勘定科目金額摘要
現金預金22,500円職員預り金_労働保険料1,600円4月度労働保険料
職員預り金_労働保険料1,600円5月度労働保険料
職員預り金_労働保険料1,600円6月度労働保険料
職員預り金_労働保険料1,600円7月度労働保険料
職員預り金_労働保険料1,500円夏季賞与労働保険料
職員預り金_労働保険料1,600円8月度労働保険料
職員預り金_労働保険料1,600円9月度労働保険料
職員預り金_労働保険料1,600円10月度労働保険料
職員預り金_労働保険料1,600円11月度労働保険料
職員預り金_労働保険料1,800円冬季賞与労働保険料
職員預り金_労働保険料1,600円12月度労働保険料
職員預り金_労働保険料1,600円1月度労働保険料
職員預り金_労働保険料1,600円2月度労働保険料
職員預り金_労働保険料1,600円3月度労働保険料
借方計22,500円貸方計22,500円*****

会計ルールのおさらい

労働保険料は当年度に概算保険料を納付(仮払金)しておき、翌年度に当年度に支払った賃金総額をもとに確定保険料を計算して概算保険料と相殺します。この時に仮払金(貸方計上=資産→減)と未払費用および職員預り金(借方計上=負債→減)を相殺し、差分について現金預金で処理(追納=資産→増/還付=資産→減)します。

費用計上と負債残高の消去は社会保険と同じですが、社会保険料が給与や賞与を支払う都度、負債残高を消去するのに対し、労働保険料は翌年に当年度の確定保険料を申告する際に、一括(延納時は3期に分けて)消去する点が大きく異なります。

会計仕訳パターン(労働保険料の納付)

労働保険料の計算

労働保険は年度更新の期間中(毎年6月1日~7月10日の間)に、いったん当年度の概算保険料を納付し、翌年の年度更新時に当年度中に支払った賃金総額に基づき計算した確定保険料を申告して、概算保険料と確定保険料の差額を清算(追徴・還付)する仕組みです。したがってまず当年度の確定保険料の額を計算します。

支給項目支給額
4月度給与320,000円
5月度給与320,000円
6月度給与320,000円
7月度給与320,000円
夏季賞与300,000円
8月度給与320,000円
9月度給与320,000円
10月度給与320,000円
11月度給与320,000円
冬季賞与360,000円
12月度給与320,000円
1月度給与320,000円
2月度給与320,000円
3月度給与320,000円
1年間の賃金総額4,500,000円

労働保険料の計算

■労災保険料率:0.30%(3/1,000)
∴労災保険料=4,500,000円×0.3%=13,500円

■雇用保険料率:1.35%(13.5/1000)
∴雇用保険料=4,500,000円×1.35%=60,750円(被保険者負担分22,500円、事業主負担分38,250円)

■確定労働保険料=労災保険料13,500円+雇用保険料60,750円=74,250円

労働保険年度(4月~翌年3月)中に支払われた賃金総額をもとに算出した確定労働保険料は74,250円です。この額は元帳の未払費用の残高51,750円と職員預り金の残高22,500円の合計74,250円と一致します。

年間の労働保険料(概算額)の合計が40万円以上の事業主は3回に分けて労働保険料を分納(延納)できます。40万円÷(0.30%+1.35%)≒24,240千円(事業所単位の年間賃金総額)なので、歯科医師1名、歯科衛生士2~3名、パートの事務員1名程度の規模の歯科クリニックが想定されます。※ただし延納できるのは概算保険料(後述)です。

確定労働保険料との清算

概算労働保険料68,000円に対し、確定労働保険料は74,250円でした。概算労働保険料はすでに仮払いしていますので、不足分の6,250円を追納します(貸方に現金預金=資産の減)。もし概算額の方が大きければ、過分について都道府県労働局に還付申請(確定申告から10日以内)しますが、通常は次年度の概算労働保険料に充当されます。

▢年7月10日(◯年度の翌年)

(借)勘定科目金額(貸)勘定科目金額(摘要)
未払費用_労働保険料51,750円仮払金_労働保険料68,000円◯年度確定労働保険料
職員預り金_労働保険料22,500円現金預金6,250円
借方計74,250円貸方計74,250円*****

概算労働保険料は、当年度の賃金総額が大幅に変更(例:大幅な増員や賃金改定)される予定がない限り、原則として前年度の確定労働保険料の額とします。しかし多くの事業所では1年を通して従業員の出入りや昇給等があるため、概算保険料と確定保険料が一致しないのが普通です。

上級者(応用)編

負債科目(未払費用、職員預り金)を介さずに、給与費の計上あるいは支払時に、ダイレクトに仮払金を消去する方法もあります。社会保険と労働保険および諸税の徴収・納付の仕組みを熟知している担当者の場合は、こちらの仕訳の方がシンプルで合理的です。

(借)勘定科目金額(貸)勘定科目金額(摘要)
法定福利費_労働保険料3,680円仮払金_労働保険料5,280円◯月度労働保険料(事業主)
現金預金1,600円◯月度労働保険料(被保険者)
借方計5,280円貸方計5,280円*****

補足:確定保険料と負債残高が一致しない時

従業員数が多く、出入りの激しい事業所では、1年間に支払った賃金総額から算出した確定労働保険料と、支払いの都度計上してきた負債残高(未払費用および職員預り金)が一致しないことがよくあります。筆者の経験から申し上げると、この主な原因は次のとおりです。

  • 取得喪失手続きの遅れ:入退社に伴う雇用保険の資格取得・喪失手続きが遅れ、過不足や計上時期のズレが発生した場合
  • 賃金範囲の認識ズレ:兼務役員報酬の除外ミスや、非課税通勤手当・各種手当の集計漏れなど集計対象に相違がある場合
  • 新料率改定の反映漏れ:毎年4月に改定される新しい雇用保険料率を、給与計算ソフトの料率マスタに反映し忘れた場合
  • 賞与支給時の記帳・控除漏れ:賞与分の法定福利費計上や職員預り金控除を失念した場合(給与計算と経理の双方で注意)
  • 端数処理の累積:毎月の控除・計上時の端数処理と年間の確定計算との計算手法の差による微差

少額の端数差であれば決算期や納付時に法定福利費で調整しますが、大幅な差異がある場合は、賃金台帳と帳簿上の各推移を照合し、控除漏れや手続き遅延の有無を確認します。

社会保険料が個人別かつ給与支払いの都度に保険料を徴収・納付しますが、労働保険料は事業所ごとに年度を一括して徴収・納付します。また当年度は概算保険料を納付し、翌年度に当年度の確定保険料と相殺するなど独特な仕組みとなっています。長期間にわたって負債科目を管理してゆかねばならないため、基本的な仕組みを理解する必要があります。

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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/人事コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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