当サイトはアドセンス広告およびアフィリエイト広告を利用しています。

001_労働契約のFAQ

【労働条件変更】変形労働から通常勤務へ。契約書再締結か再交付か?合理的な対応は?

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

疑問な白衣の女性

当院は従業員数10人未満の歯科クリニックです。当院では過去に1ヶ月単位の変形労働時間制(週休1日制に近い運用)を導入した際、スタッフと雇用契約書を締結しました。しかし近年、変形労働時間制から通常の労働時間管理による「完全週休2日制」へと制度を変更しました。

この度、行政手続きの関連で久しぶりにスタッフの雇用契約書を確認したところ、10年以上前の古い契約内容(変形労働時間制・旧基本給など)のままになっていることが発覚しました。昇給時も口頭や書面での通知はなく、給与明細の更新のみで運用してきた状態です。

勤務形態を変更した際、実務上どのように対応するのが望ましいでしょうか?以下の点についてアドバイスをお願いします。

  1. 労働条件通知書を再交付すべきか、それとも労働契約書を再締結すべきか?
  2. 労働契約書を再締結する場合、会社側や労使関係におけるリスクや注意点はあるか?
  3. 契約書にサインしてもらう日付はいつにするのが妥当か?
  4. 小規模クリニックにおいて、実務上最も合理的な手続き方法はないか?

ご相談への回答

できるビジネスパースン

診療体制や勤務ルールの変更に伴い、過去の労働条件書面と実態との間に乖離が生じているケースは、個人経営や小規模な歯科クリニックで非常によく見られます。結論から申し上げますと、「労働条件通知書の再交付」と「労働契約書の再締結」のどちらの手法をとっても法的に問題はありません。

しかし、貴院のような小規模クリニックの実情を踏まえると、全員と「労働契約書を再締結(更新)」する対応が最も合理的でリスクの少ない方法となります。

労働条件通知書の再交付か、労働契約書の再締結か

労働基準法第15条は雇入れ時の労働条件明示(書面交付等)を義務付けていますが、既存スタッフの労働条件を変更する際の書面再交付までは義務付けていません。一方で、労働契約法第4条では「労働者及び使用者は、労働契約の内容(変更後の内容を含む)について、できる限り書面により確認すること」と定めています(努力義務)。

  • 労働条件通知書(再交付): 使用者からの一方的な通知の形式をとるため、「同意を得たか」という点で合意の有無が曖昧になるリスクが残ります。
  • 労働契約書(再締結): 労使双方の署名・押印により、変更後の労働条件について「労使間で合意が成立した」ことを明確な証拠として残せます。

労働契約書を再締結する場合のリスクと注意点

労働契約書を再締結すること自体に法的リスクはありません。むしろ、実態と異なる10年前の契約書が放置されている状態の方が、「残業代の計算根拠」や「労働時間の枠組み」を巡って労使間のトラブルに発展した際のリスクが高くなります。

注意点は、正副2通を作成してスタッフ全員から回収・署名捺印を得る事務作業が発生することや、10年ぶりの書面提示によってスタッフから「過去の基本給の変更経緯」や「過去の残業代」について質問や指摘を受ける可能性がある点です。

これについては、「過去に不利益が生じていた訳ではないこと、そして現在の良好な労働条件(週休2日制や昇給後の給与)を正確に書面化し、安心して働いてもらうための整備である」と前向きな意図を丁寧に説明することで円滑に同意を得ることができます。

サインしてもらう日付(契約日)の設定

変形労働時間制の廃止や所定労働時間の変更は、就業規則(または就業規則に準ずる規程・労使協定)の変更と連動しています。

日付を設定する際は、「変形労働時間制をやめ、原則的な週休2日制へ移行した実際の変更施行日」を契約開始日(または労働条件変更日)として明示し、契約書に署名捺印する日付は「実際に説明を行い合意した本日(現在)の日付」とするのが実務上最も整合性が取れます。

小規模事業所における合理的なアプローチ

大企業など独立した人事部門が設置されている組織では、基本給や職責の改定には「給与辞令」や「異動辞令」を交付し、詳細は就業規則および賃金表や役職・等級規程を参照させる、という委任運用(就業規則への委任)が一般的です。

しかし、常時10人未満の小規模な歯科クリニックでは、就業規則の作成・届出義務が無いため、細かな規程を完備して運用するのは返って事務負担が大きくなります。「昇給時や重要な労働条件変更のタイミングで、労働契約書(兼労働条件通知書)を最新内容で更新・再締結する」方がシンプルであり、法的にも極めて安全で合理的です。

本件のポイント

気づきを得た白衣の女性
  • 変更時の書面化手法: 労働条件通知書の再交付でも可能だが、労働条件変更合意の証跡を明確にするため「労働契約書の再締結」を行うのがベスト。
  • 再締結の法的リスク: 労働契約書の再締結自体にリスクはなく、現在の正しい労働条件を反映させることで無用な労使トラブルを防止できる。
  • 書面の日付設定: 労働条件の変更が効力を生じた「施行日(変更日)」と、実際に書面に署名・押印した「記入日」を分けて記載し、整合性を保つ。
  • 小規模クリニックの実務運用: 契約変更の節目で労働契約書を最新内容に更新・再締結する運用の方が、少人数の現場にとって格段に合理的である。
【関連記事】

(画像をクリックすると問い合わせフォームが起動します)

  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/人事コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

-001_労働契約のFAQ
-