人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。
依頼者からのご相談

当院は、歯科医師3名、歯科衛生士5名、受付・歯科助手4名が勤務する歯科クリニックです。この度、入社8ヶ月目の男性スタッフ(事務員)から「妻の出産に伴い、育児休業を取得したい」と申し出がありました。
当院の育児休業規定には、労使協定に基づき「入社1年未満の従業員からの休業の申し出を拒むことができる」と定めています。本人には慶弔休暇等の特別休暇や年次有給休暇の利用を推奨したのですが、「それでは日数が足りない」と納得してもらえません。この場合、規定通り拒否することは可能でしょうか?また院長判断で特例的に休業を認めても問題ないでしょうか?
ご相談への回答

結論から申し上げますと、貴院が労使協定により除外規定(入社1年未満の除外)を適正に締結・定めているのであれば、法的に育児休業の申出を拒否することは可能です。一方で、法的な要件を満たさない場合であっても、自院の判断で特例的に育児休業を認めること自体は法令上禁止されていません。ただしガバナンス上のリスクについて注意が必要です。
入職1年未満の育児休業除外
育児・介護休業法では、労使協定を締結している場合、「入職1年未満の労働者」を育児休業の対象から除外することを認めていますので、貴院は当該申出を拒否できます。したがって、当該スタッフが利用できるのは特別休暇や、本人が保有する年次有給休暇に限られます。
子の看護休暇に関する法改正
育児休業に関連する制度として「子の看護休暇」があります。以前は入社6ヶ月未満の労働者を労使協定で除外することが可能でしたが、現在はこの除外規定は廃止されており、小学校3年生までの子を養育する労働者は年5日を限度として、傷病や予防接種、感染症による学級閉鎖、入園・入学式等の理由で看護休暇を取得する権利を有しています。
法定以上の措置は可能だがリスクもある
育児・介護休業法が定めているのは「条件を満たさない申出を拒否できる権利」であり、事業主が法令の基準を上回る手厚い取り扱い(入社1年未満でも育児休業を認めること)を自発的に行うことを禁止するものではありません。
しかし従業員に要求されるまま特例的取り扱いを濫発することは、他のスタッフとの間で不公平感が生じ、組織のガバナンス(統治体制)が揺らぎ、職場モラルの悪化や有能なスタッフの離職を招くため、職場全体で統一されたルールに基づき対応する必要があります。
本件のポイント

- 「入職1年未満の除外規定」について労働者の過半数代表者と労使協定を締結すれば、育児休業の申出を適法に拒否できる。
- 法改正により「子の看護休暇」の除外規定は廃止されているため、入社直後のスタッフであっても年5日等の看護休暇取得を拒むことはできない。
- 法令の基準を超えて入社1年未満のスタッフに育児休業を認めることは適法だが、特例的取り扱いではなく職場全体の統一ルールとして処理すべきである。
本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。



