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001(制度概要)_労働基準

法定労働時間を正しく理解して適正な労務管理を確立する

貴院では「法定労働時間」を正確に理解できていますか?法定労働時間の違反は厳しい罰則を伴うため、本記事では法定労働時間の基本原則、小規模クリニックの特例、残業に必要な36協定の概要を解説します。

本記事をご一読いただき、法令遵守に必要な知識をしっかり理解し、適正な労務管理を実現しましょう。

経営者が知るべき「法定労働時間」の基本原則

労働時間の上限「1日8時間・週40時間」の定義

労働基準法では、労働時間の上限が定められており、これを法定労働時間と呼びます。原則として、使用者は労働者に、休憩時間を除き1日について8時間、1週間について40時間を超えて労働させてはなりません。

よくある誤解ですが、変形労働時間制を採用していない限り「月の法定労働時間」という概念は法律上存在しません。労働時間はあくまで「1日」と「1週間」の単位で認識するのが労務管理のセオリーです。

従業員10人未満のクリニックには「週44時間」の特例が…

歯科クリニックを含む「保健衛生の事業」は、労働基準法に定める特例適用事業に該当し、これにより、常時10人未満の労働者を使用する小規模なクリニックでは、1週間の法定労働時間が44時間まで認められる特例があります。

ただし特例適用事業であっても、1日の法定労働時間は8時間であることに注意が必要です。また1年単位の変形労働時間制を導入する場合は、週の法定労働時間の特例は適用されません。

法定労働時間を超える残業はどうなるのか?

労働基準法違反には拘禁刑または罰金刑が…

法定労働時間の規定に違反して労働者を就労させた場合、使用者は「6ヵ月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金」という厳しい罰則が科されます。法定労働時間を超える労働を指示した管理職のみならず事業者(法人または個人開業医)も処罰されます。

ちなみに法定労働時間違反(後述の36協定違反も含む)で書類送検される事業者は毎年30~40件といわれています。労働基準監督署から是正勧告をうけてもなお改善しない場合に書類送検されるため、実際の違反数は相当な件数にのぼるはずです。

法定労働時間を超える残業は「36協定」が必須

本来、法定労働時間を超える労働は禁止されていますが、「36(サブロク)協定」を締結し、労働基準監督署に届け出ている場合に限り、例外的に法定労働時間を超えた労働(時間外労働)が適法となります。

なお厳密には36協定によって適法となるのではなく、法令違反に対する罰則の適用を免除される…という認識が正解です。歯科クリニックにおいても、急な急患対応などで終業時間が延びる可能性がある場合は、この協定の届出が不可欠です。

法定労働時間にまつわるエトセトラ

法定労働時間と所定労働時間の違いを説明できますか?

法定労働時間と似たような言葉に所定労働時間というものがあります。両者の違いは次のとおりですが、変形労働時間制を採用しない場合は、「法定労働時間(8時間)>所定労働時間(8時間未満)」となるのが一般的です。

  • 法定労働時間:法律で定められた絶対的な上限(原則、1日8時間・週40時間)です。
  • 所定労働時間:法定労働時間の範囲内で、各クリニックが就業規則や雇用契約書で任意に定める労働時間のことです。例えば始業9:00〜終業18:00で休憩1時間なら、所定労働時間は8時間となります。

残業させるなら就業規則・36協定・割増賃金がマスト要件

法定労働時間を超えてスタッフを働かせるには、以下の手続きと条件が必要です。

  1. 就業規則への明記:業務の都合により残業が発生する場合がある旨を記載します。
  2. 36協定の締結と届出:労使間で合意し、所轄の労働基準監督署へ届け出ます。
  3. 割増賃金の支払い:法定労働時間を超えた労働に対しては、通常の賃金の2割5分以上の割増賃金を支払う義務があります。

なお36協定を締結した場合でも、時間外労働には上限時間が設けられています。さらに時間外労働に対する割増賃金は、残業を奨励するためのインセンティブではなく、あくまでも残業抑制のための経済的ペナルティであることにご留意願います。

法定労働時間の無知が招く経営リスク

過重労働による労災・医療事故リスクの増大

36協定を届け出ていても時間外労働をさせられる時間には上限が設けられています(別の記事で詳しく解説します)。しかし上限の枠内に収まっていればよいわけではなく、個々のスタッフの職種や職責、年齢、その他事情に応じた労働時間の配慮が必要です。

過重労働はスタッフの心身の健康を蝕み、脳・心臓疾患などの労災リスクを高めます。さらに医療現場ではスタッフの疲弊が集中力の低下を招き、重大な医療事故に繋がる恐れもあります。安全安心な医療サービス提供のためには、スタッフの健康確保が不可欠です。

ワークライフバランス軽視の代償は大きい

歯科業界は歯科衛生士をはじめとする「ライセンス集団」であり、慢性的な人材不足にあります。近年、働く側の意識としてワークライフバランスの重視が定着しており、法定労働時間を軽視するような職場は、有能な人材から忌避され、離職率の増加や採用難を招きます。

スタッフが意欲を持って長く働き続けられる環境を整えること(ES:職員満足)こそが医療サービスの質向上をもたらし、患者満足(PS)の実現と歯科クリニック経営の安定に繋がる鍵となるのです。

本記事を通じて法定労働時間違反が法令違反のみならず、労災事故や医療事故、また人材の離職・採用難といった人事管理上のリスクを招くことをご理解いただけましたでしょうか。

法令に準拠した労務管理を実施し、安全安心な職場環境の確立が従業員満足度(ES)を高め、結果的に患者満足度(PS)の高評価につながるのです。

本記事の内容は投稿時点の法令にもとづき要点のみを平易な表現で執筆しています。実務においては所轄の官公署にご相談のうえ、貴院の実情に応じて適切にご対応願います。なお弊社でもオンライン人事相談を実施中です。詳しくは弊社ホームページよりご確認ください。


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  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/医療労務コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

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