当サイトはアドセンス広告およびアフィリエイト広告を利用しています。

003_休日休暇のFAQ

【ハラスメント被害】年次有給休暇の無いスタッフに特別休暇を付与する義務はあるか?

人事相談FAQでは、実際に運営者(RWC合同会社・RWC社労士事務所)が取り扱った人事相談のうち、頻出の事案あるいは重要と思われる事案を厳選し、医療業界に置き換えてご紹介しています。

依頼者からのご相談

疑問な白衣の女性

当院は、院長である私と、歯科衛生士・歯科助手などスタッフ12名が勤務する歯科クリニックです。現在、当院内においてハラスメントの調査をしています。被害を訴えている歯科助手スタッフは、精神的ストレスから体調不良を訴えておりますが、入社して5ヶ月目のため就業規則上の年次有給休暇が付与されておりません。

本人からは体調の波に合わせて休暇を取りたいと申し出がありましたが、安全配慮義務の観点から特別休暇(有給)を付与すべきでしょうか? また、もしこのスタッフに年次有給休暇が付与されていた場合は、考え方が変わるものでしょうか?

ご相談への回答

できるビジネスパースン

ハラスメントの被害を訴え、体調不良を起こしているスタッフへの対応は、医療機関の安全配慮義務および労務管理の観点から極めて慎重な判断が求められます。結論から申し上げますと、貴院が有給の特別休暇を付与する法的義務はありません。

就業規則や賃金規程に特別休暇(有給)の定めがない場合、就労が困難な日については「無給の欠勤」として扱うのが原則です。ただし、体調に応じた勤務調整を行って欠勤を承認することは、安全配慮義務(労働契約法第5条)を履行するうえで極めて適切な措置となります。

特別休暇(有給)の新設と運用上の注意点

貴院において、今回の事案をきっかけに「特別休暇(有給)」を特例的に付与、あるいは規程として新設すること自体は法的に何ら問題ありません。

しかし、労務管理上の注意点として、特定のスタッフだけに法外な特例措置を一度認めると、それが「労務管理上の前例(労使慣行)」となり、将来的に同様のトラブルが生じた際にも同等の有給休暇を与えなければならなくなるリスクがあります。新設する場合は、対象条件や取得可能日数などを明確に規程化しておくことが不可欠です。

年次有給休暇が付与されている場合の取扱い

もしハラスメント被害に遭った歯科助手スタッフに年次有給休暇が付与されていた場合であっても、基本的な考え方に大きな違いはありません。

年次有給休暇は、労働基準法第39条に基づき「労働者の指定する時季」に与えなければならないため、体調不良による欠勤日に対して、クリニック側が一方的に有給休暇を充当することは法令違反(時季指定権の侵害)となりますので、あくまでスタッフ本人の自由な意思に基づく申請があった場合に限り、年次有給休暇として取り扱うことができます。

欠勤期間中の生活保障とハラスメント認定後の賠償義務

ハラスメントの調査が完了し、労災認定や不法行為が確定するまでの間、当該欠勤は「私傷病扱い」となります。無給の欠勤期間中の生活保障としては、もし貴院が協会けんぽに加入しているなら、当該スタッフに医療機関(精神科や心療内科等)を受診してもらい、医師による「労務不能」の診断書を取得したうえで、「傷病手当金(支給開始日から最長1年6ヶ月、標準報酬日額の約3分の2)」を申請することができます(市町村国は原則として傷病手当金はありません。また国保組合の場合は給付要件や給付内容がそれぞれ異なります)。

一方で、調査の結果ハラスメントの事実が認定された場合、使用者(貴院)には安全配慮義務違反や使用者責任(民法第715条)に基づく損害賠償責任が発生します。業務上災害(労災)として認定された場合は労災保険から休業補償給付(8割相当)が行われますが、民法第536条2項(使用者の責めに帰すべき事由による休業)に基づき、スタッフから請求があった場合は、残る2割分の賃金を含む全額の補償義務を負うことになります。

本件のポイント

気づきを得た白衣の女性
  • 特別休暇(有給)を与える法的義務はないため、就業規則に定めがない場合は「無給の欠勤」として扱うが、体調不良に配慮して欠勤を承認し就労義務を免除することは安全配慮義務として適切である。
  • 有給休暇の充当は本人の申請が大原則であり、体調不良の欠勤日に対して使用者側が一方的に有給休暇を消化させることは労働基準法違反となる。
  • 協会けんぽ(あるいは組合健保)に加入している場合は、欠勤中の所得保障として傷病手当金を案内し、精神科等の受診と就労不能の診断書取得を促して手続きを進める(国保組合の場合は給付要件と給付内容を確認)。
  • ハラスメント認定時は賃金全額相当の補償責任が生じるため、労災保険の給付(8割)でカバーされない残額について民法上の賠償請求を受けるリスクを認識しておく。
【関連記事】

(画像をクリックすると問い合わせフォームが起動します)

  • この記事を書いた人

山口光博/社会保険労務士/人事コンサルタント

医療法人の総務課長→医事課長→法人本部人事課長を歴任後、上場準備企業の人事部長を経て開業。歯科・歯科口腔外科部門の事務マネジャー経験あり。

-003_休日休暇のFAQ
-,